例えば、ステルスマーケティングや、同意なき個人情報の収集や活用などがそれに該当する。さらに最近では、会社の問い合わせフォームから営業メッセージを執拗に送り付けてくる「問い合わせフォーム営業」も増えている。
近年問題となっている「ダークパターン」も非倫理的マーケティングと言えよう。これは、消費者が不利益を被るような決定へと誘導すサイトやデザインなどを意味する。
欧米では当たり前の倫理的マーケティング
コロナ禍の前、筆者は北米のいくつかのマーケティング系のカンファレンスに足繁く通っていた。さまざまなカンファレンスに参加していると、どこも「倫理観の大切さ」を説いていることに気がついた。
英語圏では「マーケティング倫理」という言葉もよく見聞きするし、企業活動を展開するうえで、それは「当然のことである」というニュアンスで伝えられている。
いま日本において重要なのは、こうした「倫理的なマーケティング」だ。これは顧客に寄り添った、高い倫理観のあるマーケティングアプローチを意味するもので、結果的に企業に利益やアセット(資産)をもたらすものなのだ。
注目したいのは、この「結果的に」というところである。利益やアセットがマーケティングの第一目標とはなってはいけない。顧客に寄り添いながら倫理観を重視するマーケティングをしていれば利益やアセットにつながる。この考え方は、欧米圏のビジネスではすでに当たり前なのである。
なぜ日本では冒頭で触れたような非倫理的なマーケティングが横行するのか。
理由の1つには、半年に一度、会社が個人の評価をする制度が一般的であることが挙げられる。こうした環境下においては、マーケティングの担当者は、短期的に結果を出すために、極端な刈り取り型施策や非倫理的なマーケティング施策に手を染めがちなのだ。
加えて、マーケティングテクノロジーの発達によって、結果の数字が見えてしまうようになったことだ。「見えてしまう」というのがポイントで、数字に寄りかかりすぎたマーケティングが蔓延しているのだ。
こうしたマーケティングを行う担当者の目には、顧客のマインドはほとんど映っていないだろう。数字を追い求めるということだけが、第一目的となってしまっているからだ。