物語と科学で偏見をなくす「ヒューマンライブラリー」とは

「物語を共有するため、人という本を借りましょう」。ヒューマンライブラリーは読者にそう呼びかけています。Photo by Alfons Morales on Unsplash


ヒューマンライブラリーの仕組み


ヒューマンライブラリーは、21年前にデンマークの人権活動家でジャーナリストのロニー・アバゲール氏が、非暴力活動に興味を持ったことがきっかけで創設されました。現在では80カ国以上でイベントを開催し、50以上の言語で1000冊以上の「ヒューマンブック」を貸し出しています。

それぞれの「本」には、「慢性うつ病」、「人身売買の生存者」、「イスラム教徒」、「トランスジェンダー」、「黒人活動家」などのタイトルがつけられており、それらを代表する人々の経験が語られます。

「図書館というのは、金持ちでも貧乏でも、ホームレスでもお城に住んでいても、教授でも読み書きができなくても、誰もが歓迎される数少ない場所の一つです。だからこそこの取り組みはうまくいくだろうと考えていました」とアバゲール氏はCNNのインタビューで語っています。「間違いなく、現代において最もインクルーシブな施設なのです」

ヒューマンライブラリーは、一対一でも少人数のグループでも、人が安心して参加できる空間を作り、本を表紙で「判断しない」ように呼びかけています。ここでは、多様性やインクルージョンに対して画一的な解決策でアプローチするのではなく、一人ひとりの偏見や先入観に合わせたアプローチを行っているのです。

「人々は安全な場所で他者とつながり、緊張やストレスを和らげたいのでしょう」とアバゲール氏は語ります。


ヒューマンライブラリーには、語るべきストーリーを持った「人々」の本が揃っています。イメージ: The Human Library

ダイバーシティとインクルージョンの戦略


昨年、世界経済フォーラムが発表した「ダイバーシティ、平等、インクルージョン4.0ツールキット」は、企業がテクノロジーを活用して公正で公平かつ、多様性のある職場づくりを進めるよう支援するものです。

「成功する組織は、従業員の多様な意見、スキルセット、人生経験によって支えられています」。世界経済フォーラムの取締役であるサーディア・ザヒディは、発表時のプレスリリースでこのように話しています

「人種間の正義、ジェンダー公正、障がいのインクルージョン、LGBTIの平等、そしてあらゆる形態の人間の多様性を包括することは、新型コロナウイルス感染拡大の危機から抜け出そうとする職場の『新常識』となる必要があり、この「新常識」を早急に実現するためにテクノロジーを活用できることは間違いありません」


ヒューマンライブラリーの壁に書かれた文字。イメージ: The Human Library


自分について語るホームレスの男性。イメージ: The Human Library


ヒューマンライブラリーでは障がいについて対話する場を設けています。イメージ: The Human Library

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Kayleigh Bateman, Senior Writer, Formative Content

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