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2022.01.15 12:00

嵐の中、子供時代を生き直す2つの「個」として|イノベーターの妻たち


彼が「弱いところもアピール」した、こんな初体験エピソードがあります。

大きなパーティーを企画した時、彼は会費をかなり高額に設定した。「大丈夫、これくらいでも人は来るから」と自信たっぷりで。でも、ふたを開けたらまったく申し込みがなく、「どうしよう」とひどく落ち込んでしまった。

私が「これはもう、みんなに助けを求めたほうがいいよ」と言ったところ、彼がフェイスブックなどで「実は人が集まらず、困っています。皆さん助けてください」と投稿した。そうしたらみなさんが、「その言葉、待ってました!」というノリで、一斉に手を差しのべてくれたんです。

みんなが本当は「助けたい」と思ってくれていても、自分が強そうにしていたら手を差しのべにくい、壁を乗り越えてサポートしてもらいにくいことがある。そのことに気づいたんですよね。

これもきっかけに、「よし、弱いところも出していこう」とブランディング・アップデートをしたら、みなさんとより気脈が通じ、ものごとがうまく運ぶようになった。いまでは「じゃあ、もう、ポンコツ推しでいくわ!」となっています。

ですから、「デキる」と思われている人ほど、モビルスーツを脱ぎ捨てて、眉間のシワを伸ばすためにも「あえてのポンコツアピールを」をお薦めします。

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アートプロジェクト「KESHIN」からの「鳩」を自ら装着して 

1と1、2つの「個」として。苦しみからの卒業経験をシェアしたい


彼は私と同様、アダルトチルドレンでもあります。そんなわれわれはいわば、「嵐の中で身を寄せ合う子供」なのかもしれません。

もちろん、愛情を試し合う前提の「依存」関係ではなく、頑張って一緒に外の世界と折り合いをつけていこうねという「共同」関係、いわば「全方位パートナー」でいたいなと。2つの個、すなわち、「彼の1」と「私の1」が協働し、共鳴し合うことで不安が軽減され、勇気は倍増されると思っています。

そして、2人ともやっと「自尊心や自己肯定感がマイナスの状態」から解放されて幸せになったので、できればその体験を社会的に還元したい。過去の自分たちのように苦しんでいる人たちを1人でも減らしたい。それがわれわれの世の中への貢献のベースになっています。

アダルトチルドレンはそもそも、「子供時代を奪われてしまった大人」といっていい。そんな人たちが子供時代をもう一度体験することは、とても大事なことです。だからわれわれも、2人で子供に戻ろうぜ、という感じで、なるべく馬鹿馬鹿しいことをやって、笑って過ごしたいんです。

アダルトチルドレンでなくても、社会、組織、家庭での期待役割をまっとうしようとするあまり、個性や多様性を発現できていない大人は多いと思います。優秀であればあるほど、そのために「なんだか息苦しい」「生きづらい」と感じているのではないかと。

個人的な「歴史」と折り合いをつけた私たちの経験をシェアすることで、そういう人たちと一緒にハッピーになっていければいい。彼らにももっと楽に生きられるようになってほしい。そう心から願っています。

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取材当日、アトリエを偶然訪れた円氏と。


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文=石井節子 写真=曽川拓哉

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