彼が「弱いところもアピール」した、こんな初体験エピソードがあります。
大きなパーティーを企画した時、彼は会費をかなり高額に設定した。「大丈夫、これくらいでも人は来るから」と自信たっぷりで。でも、ふたを開けたらまったく申し込みがなく、「どうしよう」とひどく落ち込んでしまった。
私が「これはもう、みんなに助けを求めたほうがいいよ」と言ったところ、彼がフェイスブックなどで「実は人が集まらず、困っています。皆さん助けてください」と投稿した。そうしたらみなさんが、「その言葉、待ってました!」というノリで、一斉に手を差しのべてくれたんです。
みんなが本当は「助けたい」と思ってくれていても、自分が強そうにしていたら手を差しのべにくい、壁を乗り越えてサポートしてもらいにくいことがある。そのことに気づいたんですよね。
これもきっかけに、「よし、弱いところも出していこう」とブランディング・アップデートをしたら、みなさんとより気脈が通じ、ものごとがうまく運ぶようになった。いまでは「じゃあ、もう、ポンコツ推しでいくわ!」となっています。
ですから、「デキる」と思われている人ほど、モビルスーツを脱ぎ捨てて、眉間のシワを伸ばすためにも「あえてのポンコツアピールを」をお薦めします。
アートプロジェクト「KESHIN」からの「鳩」を自ら装着して
1と1、2つの「個」として。苦しみからの卒業経験をシェアしたい
彼は私と同様、アダルトチルドレンでもあります。そんなわれわれはいわば、「嵐の中で身を寄せ合う子供」なのかもしれません。
もちろん、愛情を試し合う前提の「依存」関係ではなく、頑張って一緒に外の世界と折り合いをつけていこうねという「共同」関係、いわば「全方位パートナー」でいたいなと。2つの個、すなわち、「彼の1」と「私の1」が協働し、共鳴し合うことで不安が軽減され、勇気は倍増されると思っています。
そして、2人ともやっと「自尊心や自己肯定感がマイナスの状態」から解放されて幸せになったので、できればその体験を社会的に還元したい。過去の自分たちのように苦しんでいる人たちを1人でも減らしたい。それがわれわれの世の中への貢献のベースになっています。
アダルトチルドレンはそもそも、「子供時代を奪われてしまった大人」といっていい。そんな人たちが子供時代をもう一度体験することは、とても大事なことです。だからわれわれも、2人で子供に戻ろうぜ、という感じで、なるべく馬鹿馬鹿しいことをやって、笑って過ごしたいんです。
アダルトチルドレンでなくても、社会、組織、家庭での期待役割をまっとうしようとするあまり、個性や多様性を発現できていない大人は多いと思います。優秀であればあるほど、そのために「なんだか息苦しい」「生きづらい」と感じているのではないかと。
個人的な「歴史」と折り合いをつけた私たちの経験をシェアすることで、そういう人たちと一緒にハッピーになっていければいい。彼らにももっと楽に生きられるようになってほしい。そう心から願っています。
取材当日、アトリエを偶然訪れた円氏と。
関連記事>>>第1回:夫婦でビジョンを作る「共同創業婚」のススメ|イノベーターの妻たち