経済・社会

2021.12.28 11:00

ブロードウェイも再び封鎖。感染拡大を繰り返す米国経済の今

ニューヨークでは感染の再拡大を受け、ショーやイベントの中止が相次いでいる(Alexi Rosenfeld/Getty Images)


インフレと雇用のミスマッチが襲う


今年の10月前まで、西海岸のロサンゼルスをはじめとした港では、コロナ禍での感染拡大による労働者不足などにより貨物船の陸揚げが最長2週間待ちにまで停滞し、全米での物流に支障が出ていた。しかし港湾作業を24時間稼働させるなど、遅延の解消に向けた措置により、ゆっくりながら解消に向けて動き出している。
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12月半ばになってからは、ようやく品不足を起こしていた半導体関係の製品も入荷が増加し、知り合いの会社も待っていた製品を買い占めたと話していた。

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Mario Tama/Getty Images

海運の遅れにより、当然、コンテナ当たりの陸揚げまでのコストが増え、流通の停滞から物価に転嫁される要素も含め、インフレ率も11月には6.8%の上昇を記録した。12月に入ってからは、FRB(米連邦準備制度理事会)も利上げに乗り出さざるを得ず、インフレ抑制のため2022年には3回までの利上げも見込まれている。
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インフレに関しては、スーパーマーケットに行くたびに「あれ、これだけでこんなにもするのか?」と驚いたり、生鮮食品の単価がいつのまにか「25セント→50セント→1ドル」と上がっていたり、商品のパッケージのサイズが小さくなっていたりと、物価の上昇を肌で感じる。

雇用のミスマッチ状況も一向に改善されていない。9月には、コロナ禍前の2019年9月と比べて自主退職する人が29%増加し、422万人に達した。これは2000年以来の高い水準だ。

また、状況が深刻なレストラン業界のみならず、至るところで人手不足の声が聞こえてくる。リモートワークに慣れてしまったため、9月以降出社を促そうにも、子供のケアも含めて、そのまま家でできる仕事に変えたいという人も増えている。企業の雇用不足から、賃金上昇が起こり、それならよりよい条件のところに転職しようという「大量離職トレンド」も続いている。離職率は昨年の2.8%から3.4%にまで上昇した。

一方、流通に関わる輸送や倉庫、卸売の業界では、求人は上昇し続けている。経済再開に伴い、教育やヘルスケア、観光、レジャー、サービスセクターなどではようやく人手不足はピークを打ち、幾分雇用が進み始めたかという状況だ。

感染者数が増えているにもかかわらず、インフレ、雇用のミスマッチ、大量離職のトレンドのまま、2022年になだれ込もうとしている現在のアメリカである。

連載:ポスト・コロナのニューヨークから
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文=高橋愛一郎

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