ブロードウェイも再び封鎖。感染拡大を繰り返す米国経済の今

ニューヨークでは感染の再拡大を受け、ショーやイベントの中止が相次いでいる(Alexi Rosenfeld/Getty Images)

新型コロナウイルスのオミクロン株が南アフリカで発見されてから1カ月余り。12月のいま、ニューヨーク市エリアでも急激に感染が増えている。

アメリカでは、11月のサンクスギビングホリデーには、日本の正月のように帰省をしたり家族で集まったりする慣習があるのだが、その後2週間を経て、やはり感染が拡大してきている。昨年も同時期に同じような増加の波があり、今年もその傾向を呈している。

全米では、1日の感染者数が10万人を超える日々が続いている。これは昨年のロックダウンの時期(2020年3月〜6月)に比べて、4〜5倍の感染者数だ。ワクチン接種を「武器」に経済を再開させてきたにもかかわらず、感染はいまだ終息に向かう気配がない。

再び閉鎖されたブロードウェイ


ニューヨーク州全体では、2回以上のワクチン接種を完了した人の割合はようやく70%を超えたところで、10%がまだ1回目の接種にとどまっている。

それでも、街には「コロナ禍前のクリスマスも、これくらいだったかな」と2年前を思い起こさせるくらい人出が増えており、地下鉄やバスも混雑を増してきている。ソーシャルディスタンシングもなく、マスクをせずに歩く人も目につき、街ではコロナ禍が終わったのかと思わせるくらいの日常が見られる。

ところが実際は、ニューヨーク市の路上には、PCR検査のトラックとテントが目につき、検査待ちの人の行列が日に日に長くなっている。クリスマスや年末の旅行に向けて、飛行機に搭乗するための検査も含め、列に並ぶ人たちは後をたたない。

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Spencer Platt/Getty Images

さらに、9月半ばに少しずつ劇場が再開されたブロードウェイも、「ムーラン・ルージュ」などいくつかのミュージカル公演が感染拡大で再びキャンセルとなり、劇場も閉鎖されている。

子ども向けのショーであっても、観賞にはワクチン接種が義務付けられている。接種証明がない場合には入場させない措置を取っているため、劇場の入り口で右往左往する親子連れの様子がニュースにもなっている。

ニューヨーク市では12月27日から、民間事業者に対しても、出社する場合は従業員にワクチン接種を義務付けると発表した。9月以降、各企業は従業員の出社を促そうと試みてきたが、シティバンクやアップルも無期限リモートワークにすると発表し、なかなかオフィスには人が戻らない状況だ。

ニューヨーク・タイムズ紙によれば、10月の時点で、約33万2000人いるニューヨークの金融機関で働く従業員のうち、まだ27%しかオフィスに戻っておらず、企業は今後従業員に出社をどう促していくかに苦慮している。さらにここに来て、再びハードルが高くなってしまった。日系の企業も年内はとりあえず出社しなくていいという措置を取り始めたところが多い。
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文=高橋愛一郎

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