明朗会計を打ち出した結果、信用度が高まり、「良心的なクリニックだから、他の施術も受けてみよう」というリピートや紹介率が高まり、売上がアップしたのです。プラスαの要素として、社員の士気の高さにも及びます。「強引な勧誘」というストレスから解放された社員は、お客さまに対して「真心を込めた接客」が出来るようになりました。患者のリピーター&紹介率は、驚異の90%以上。離職率も劇的に変わり、社員数は、わずか2~3年で倍にまで増えました。
業績が伸びて利益を得る → 社員に高い給料を支払う事が出来る → 給料が高いから社員が辞めずに長く働いてくれる。という「相手によい事をするから、ずっと一緒にいられる」という「絆徳経営」の成功モデルが形成されたのです。湘南美容クリニックは、「理念」と「経済合理性」の一致が実現した好例といえるでしょう。
理論と経済性とは、対極に位置すると思われがちです。大半の企業は、先ず経済合理性を重視した経営を行います。ところが、理念を持たずに経済合理性、つまりお金だけを追求すると、社員のモチベーションが下がり、「絆徳経営」から離れ、いずれ売上は頭打ちになっていく会社は多いものです。
日本資本主義の父である渋沢栄一は、「真の富とは、『道徳』に基づくものでなければ、決して永くは続かない」という言葉を残しましたが、「持続可能な経営」の基本ともなる言葉ではないでしょうか。
丸型ダイヤの図がもたらす、企業の理想形
かといって、理念ばかり追い求めても会社は成り立ちません。一般的な統計を言えば、営業利益率は、大手企業でも平均3~4%程度です。つまり、1億円売っても300~400万円しか残らない計算になります。そうなると、税金を納めたら手元に残るものはわずかで、本当の意味での社会貢献をすることが出来なくなってしまいます。
理念だけを追い求めて、経済合理性を軽視する会社は、理念を実現する力が弱い傾向にあるのです。そのため「理念」と「経済合理性」の両立が必要なのですが、そのために我々経営者は、何を考えればよいのでしょうか。
ここで紹介したいのが、鮎川義介氏の経営哲学です。鮎川氏は、日産自動車、日立製作所、日立金属、日本テレビ、日本水産、日本ビクター等、現代まで続く数々の企業の立ち上げに関わり、日本の産業の土台を作り上げた人物ですが、私利私欲に走る事なく、自分の名前を残すこともせず、お金も要らないと言って、人々を豊かに幸せにする事に熱心で、その徳の高さから私は多大な影響を受けています。