前回のコラムでは「持続可能な経営」をテーマに、「三方よし」や「株式至上主義からの脱却」を解説させていただきましたが、今回は、具体例を交えながら、理念と経済合理性の両立というテーマに迫って参りたいと思います。
コロナ禍で売上を伸ばした「湘南美容クリニック」
コロナ禍で打撃を受けた企業は多数あります。一方で、売上を伸ばした会社があるのも事実です。非接触が望まれたコロナ禍において、「不要不急」のビジネスで事業を伸ばすのは、簡単なことではありません。そんな中、実に100億円近く売上を伸ばし、年商1000億円を超えた「湘南美容クリニック」の例を挙げたいと思います。
我々が伝え続けてきた「新しいマーケティング」や「絆徳(ばんとく)経営」を実践し、時代に応じた「三方よしのモデル」として、誠実に実績を重ねていった弊社のクライアント企業です。
まず、「絆徳経営」とは、何かをお話しましょう。
それは、「相手によいことをするから、ずっと一緒にいられる関係」を目指し、「理念」と「経済合理性」を両立させる経営方針の事です。
湘南美容クリニックの場合、業界で初めて「価格の明示化」という「よいこと」を導入しました。たとえば、テレビCMでもお馴染みの「二重手術○○円」といった表記のことです。
それまでの美容外科業界では、施術料金は、ブラックボックスになっていました。お客さまがクリニックに足を運び、カウンセリングで初めて料金システムを知るのが業界での常識。そのため、「初回千円」といううたい文句で来店したお客さまに対して、理由をつけて高額コースを契約させる。あるいは「通常250万円する脂肪吸引が、今すぐ契約すれば78万円ですよ」等と強引に勧誘するグレーな営業がまかり通っていたわけです。
そんななか、湘南美容クリニックは、全コースの価格をホームページで明らかに公開しました。二重手術ひとつとっても約30種類ある施術全ての基本料金を明示した上で、そこには何が含まれていて、オプションを選択した場合の追加料金も詳細に公開したのです。また、ビフォー&アフター写真を掲載する事で、他社との差別化も図りました。