カイゼンや暗黙知は日本の製造業がもっとも得意としてきた技だ。人間だけで「人間の可能性」を拡張させてきた技である。アマゾンやウーバーイーツは生活の便利さを追求してきたものの、ドライバー不足という深刻な問題を抱えている。チャップリンが描いた社会構造と実は変わっていない。
そこに「運ぶ」「移動する」を専業としてきた自動車メーカーがクルマ単体ではなく、「社会」や「街」というレベルで実験場をつくり挑む。真のオートメーションは万人を幸せにすべきであり、そこにAEという概念を活用して生み出そうとしている。人間がもつ「創造性」はどう活用されようとしているのか。前出の「Forbes JAPAN 2022年2月号」では、機械化をさらに高度に人間的かつ文明化させる進化することで生まれる未来について特集している。
例えば、21年12月中旬に企業評価が10億ドル以上の上場企業、いわゆる“ユニコーン”の仲間入りを果たした独ベルリン発の都市型屋内垂直農場「インファーム」はデータを使って、世界中で食糧生産を可能にして、食べ物へのアクセスを自由にする。食糧の安全保障を地球規模で変えるものになるだろう。こうした会社は、地球のあちこちで誕生しているスマートシティというエコシステム(生態系)の中で、私たちの「暮らす」という行為を変えようとしている。
AI搭載型支援視覚デバイス「オーカムテクノロジーズ」創業者のジブ・アビラム(Lino Mirgeler / picture alliance / Getty Images)
私たちの「見る」も変わろうとしている。イスラエル発の「オーカムテクノロジーズ」は、AI搭載型の視覚支援デバイスを開発している会社だ。視覚が困難な人たちに「見える」の代替機能が開発されたことで、選挙や政治など、市民社会の根幹から変革が起ころうとしている。
こうした会社に共通するのは、インフラそのものの変化である。技術を現在の社会に実装していくというより、社会そのものの土台を変えられないかという実験がすでに進んでいる。「幸せ」という計測しにくい個人の主観的な価値を、社会の土台を変えていくことで包括的に実現するものだ。それを日本、イスラエル、アメリカで総力取材をしたのが、12月25日発売のForbes JAPAN2月号だ。特集は題して「未来はすでに始まっている」である。いま、歴史はこの壮大な実験とともに移行し始めているのだ。