カマラ・ハリス米副大統領が描く、インクルーシブな起業支援への道

(photo : Jamel Toppin)

COVID-19のパンデミックを脱した後、米国経済が再建し成長するためには。彼女はその鍵を、すべての起業家を支えるインフラの拡充にあると考える。カマラ・ハリス氏が米フォーブスに寄せたのは、インクルーシブ経済への決意だ。

米フォーブスは2021年6月、同誌で初となる「50 over 50」リストを発表した。50歳を過ぎて活躍する女性起業家や女性リーダー50人のうちのひとりとして、女性初、黒人初、アジア系初の米副大統領となったカマラ・ハリスを選出した。

パンデミックのさなか、起業する人は急増した。自発的に起業した人もいれば、やむをえず事業を立ち上げた人もいる。ハリスは米フォーブスへの寄稿で、いまの状況を利用して、誰もがアメリカン・ドリームを追う機会が得られる社会を実現する方法について、彼女の考えをつづった。


1989年、カリフォルニア州でロマプリエタ地震が起き、サンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジの一部が崩落したとき、私はオークランドにいた。

当時のリーダーたちには、2つの選択肢があった。橋を元通りに復元するか、それとも橋の基盤を見直して将来の地震に耐えられるよう強化するか。選ばれたのは、後者だった。

私たちがパンデミックから回復しようとしているいま、この国は同じ選択に直面している。それは国内の経済や企業、特に中小企業とスタートアップのための選択だ。

パンデミックは、米経済がもつ欠点と亀裂を露呈した。中小企業の3分の1が営業を停止し、200万人近くの女性が離職を強いられ、数百万世帯が食費や家賃を捻出できない状態となった。

いま、私たちがしなければいけないのは、修復ではなく、「再想像」だ。中小企業に対し計600億ドル(約6兆6000億円)の緊急補助金を出したいま、私たちは資本へのアクセスを拡大し、全米の起業家の成功を阻むその他の障害を取り除かなければいけない。


(Getty Images)

まずは、資本だ。

私は最近、コロラド州で手づくりエンパナーダ(南米料理のミートパイ)の店を立ち上げたロレーナ・カンタロビシと会った。彼女はほかの多くの人と同じく、自宅のキッチンで事業を始めた。事業拡大に向けたローンを組もうとしたとき、銀行から「あなたはバンカブル(銀行が融資できる状態)ではない」と告げられた。ロレーナは懸命に働き、銀行が間違っていたことを証明してみせた。彼女の店はその後、複数の場所に支店を出し、多くの雇用を生み出した。
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文=カマラ・ハリス 翻訳・編集=遠藤宗生

この記事は 「Forbes JAPAN No.086 2021年10月号(2021/8/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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