実際、「観測史上最高の月間最高気温を記録」といったニュースがひっきりなしに報じられることは逆効果で、人々が報道に耳を傾けなくなったり、感覚が麻痺してしまったりするだけではないかと考えることもしょっちゅうだ。いまだに驚くのだが、高校で銃撃事件が発生してもトップニュースにはならないのだ。
そうした悲惨な事件は、決して常態化すべきではない。私たちはもっと「人間らしく」あり、「価値を重視した」姿勢で気候変動を話題にしなければならないと思う。私たちは気候変動を、家庭で「日常的に取り上げられるべき問題」として伝えなくてはならない。こうしたアプローチの有効性をよく表しているのが、ジョージア州に住む一般市民が気候変動による個人的な影響を共有し合う取り組み「Georgia Climate Stories」だ。
「気候変動対策は十分な速さで進められているのか」という質問
これに対する答えは「ノー」だ。公平さのために言っておくと、最近では2021年11月に英国で、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が開催され、世界が善意の取り組みに努めていることが国際社会に示された。
楽観的になれる材料があったのも事実だ。米国に関して言えば、超党派が提出したインフラ投資計画法案が、バイデン大統領と連邦議会議員の主導の下で2021年11月はじめに可決された。この新たな法律には気候変動対策の推進も盛り込まれており、称賛に値するものだ。このように、米国や海外での政策展開が遅々として進まないなりにも、少しずつ措置は講じられてはいる。
ただし、私たちに必要なのは、ワクチンのような即効性のある気候変動対策だ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックがもたらす脅威の大きさを知ったとき、米国政府はワクチンの早期実用化を目指して「ワープ・スピード作戦(Operation Warp Speed)」に着手し、それが開発加速につながった。気候変動についても同様の緊迫感が必要だ。
結局のところ、筆者が懸念しているのは、人々やインフラ、暮らしだ。気候変動に対して脆弱なのは、地球上どこでも同じだ。しかし、異常気象や、2021年8月にハリケーン・アイダの被害で発生したような複合的事象、気候変動による社会的影響(農業、経済、健康、安全保障、インフラ)によって、過度に被害を受けるコミュニティは存在する。今後は、そうした現実に関係した質問が寄せられることを期待している。