『幸福論』 バートランド・ラッセル
ノーベル文学賞を獲得した哲学者にして数学者、論理学者による「いかに幸福に生きるか」を探究した人生論。自分の関心を内に内にではなく、外界へとふり向け、あらゆることに好奇心を抱くことが幸福獲得の条件だと説く(岩波文庫)。
ラッセルは、人を不幸にさせる要因として「競争」と「退屈への恐れ」を挙げる。投資とは、他者との競争がなく退屈なものでもある。そのため興奮を得ようと高リスクかつ短期的な取引に興じてしまうことも。しかし、それでは長期的な高リターンを得られない。ラッセルは究極的な幸福の秘訣として「好奇心」も挙げるが、ここにも投資とつながる視点がある。常にアンテナを高く張りながら興味を引く対象を見いだし、資金を投じることが成功をもたらすからだ。
LIFE LESSON
投資家が備えるべき思考は、他者との競い方ではなく、自分との戦い方だ。(大崎 匠/Bagel X代表取締役)
『シン・ニホン』 安宅和人
副題は「AI×データ時代における日本の再生と人材育成」。慶大教授でありヤフーCSO(最高戦略責任者)の著者はファクトベースで現状を分析し、新たな時代の展望を描き出す。「残すに値する未来」のつくり方とは(NewsPicksパブリッシング)。
「未来は目指し、創るものだ」という力強い言葉で始まる本書は、日本の課題を多岐にわたる観点から明らかにし、今後どうしていくべきかを提言。私たちVCも起業家に投資・支援するという点で、未来を創るエコシステムの一端を担っています。VC業務に通じる「国家レベルの課題をファクトでとらえ」「来るべき次のビッグウェーブを推測し」「どういう未来を創りたいか意志をもつ」重要性を再認識させてくれる本書。VCに限らず、多くの人に読んでほしいです。
LIFE LESSON
本書の最後は「一日生きることは、一歩進むことでありたい」(湯川秀樹)という言葉。さあ行動だ。(大久保洸平/Z Venture Capital インベストメントマネジャー)
『信長の原理』 垣根涼介
歴史小説に確率論を導入し、滅びゆく者と生き延びる者の謎を描いた前作『光秀の定理』。姉妹編の本作では本能寺の変を19世紀イタリアの経済学者が発見した「パレートの法則」でひもとく。直木賞候補作(角川文庫、上下巻)。
伝記の体裁を取った娯楽性の高い作品に仕上がりつつも、経済学の視点が随所に組み込まれた新ジャンル小説。一代で覇権を握った信長が得たもの、それと逆に、成長の裏側について回ったひずみとは。企業の成長過程で必ず直面する「属人化から組織化」への転換の難しさ、組織と個々人の課題感の違いなど、歴史小説の皮をかぶった実践的なビジネス書。親しみやすい体裁なので、常識外のスピードで伸びる起業家にも読んでもらいたい作品です。
LIFE LESSON
働きアリの法則(2:6:2)やユダヤの法則(78:22)とも呼ばれる組織論。パレートの法則の比率は「80:20」。(小原崇幹/BREW代表取締役社長)