レプリカのモデルは、AIと機械学習を利用して、人々の動きをシミュレートする。このモデルを利用してMTAは運行本数を減らしてコストを抑え、パンデミックを生き抜いた。
レプリカは2021年4月、ピーター・ティールのFounders Fundの主導で4100万ドル(約46億円)を調達した。「創業間もないスタートアップが、これほどのスピードで政府機関の契約を獲得するケースは稀だ」と、新たにレプリカの取締役会に加わったFounders Fundのパートナーのトラエ・ステイーブンスは述べている。
カンザスシティに本社を置くレプリカは、アルファベット傘下のスマートシティテクノロジー企業Sidewalk Labsから2019年9月にスピンアウトした。同社の共同創業者でCEOのニック・バウデンは、「これまでの公共交通機関は、過去のデータを使って未来を予測していた」と話す。
MTAなどの公共交通機関は、これまで国勢調査や世帯調査などのタイムラグが大きいデータに依存していたが、レプリカはそれらのデータと、スマートフォンのアプリなどから得られる最新のデータを組み合わせ、オペレーションの改善に活かしている。
ここで重要なのは、レプリカがプライバシーに配慮し、匿名化されたデータでシミュレーションを行っていることだ。彼らは都市環境をシミュレートし、「AIで合成された人口」の動きを提示する。
「交通オペレーターにとって重要なのは、買い物に行く人の中で、ウーバーやリフトを利用する人の割合はどの程度かというものだ。特定の個人に紐付くデータは求められていない」と、バウデンは説明した。
Founders Fundのステイーブンスは、レプリカのような小さなスタートアップが政府機関と契約を結んだことに感銘を受け、彼らを支援したいと考えたという。ステイーブンスとバウデンは、レプリカの評価額を明かさなかったが、2人とも収益の伸びが予想を上回っている点を強調した。