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2021.12.13

日本のスタートアップ、「1兆円市場、1000億円IPO増、M&A増」へ

発売中のForbes JAPAN2022年1月号の特集「日本の起業家 ランキング2022」では、海外機関投資家からの資金流入をはじめ、続々とユニコーンが誕生するなど、ゲームチェンジさなかの「新たなフェーズ」に突入した日本のスタートアップ・エコシステムの全貌について掲載している。

今後、ウェブ版では「スタートアップ・トレンド」と称して、著名投資家20人以上へのインタビューを連載形式で掲載していく。

Vol.5では、「日本のベンチャー投資家ランキング2022」1位のジャフコ グループ・パートナーの藤井淳史、One Capital代表取締役CEOの浅田慎二へのインタビューを掲載する。(Vol.1Vol.2Vol.3Vol.4はこちら)

「リアル、かつ、重い産業」への広がり

━━ ジャフコ グループ・パートナー 藤井淳史

スタートアップ・エコシステムの進化は、まず「資金流入の大幅増」だろう。2010年代後半で言えば、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)により事業会社の資金が流入。最近では、海外投資家の資金がその流れに加わった。スタートアップの調達金額、投資家側の投資金額が大きく変わってきた。10年に現・ビジョナルへ2億円の投資をした際、「ジャフコ、異例の大型投資」とメディアが報じたが、いまでは記事にすらしてくれない規模だ。つぎに言えるのが「人材の流入増」だ。優秀な人材による起業およびスタートアップへの参画が増えた。

こうした資金、人材の流入に伴い、起業家側の目線も上がり、「未上場時に100億円以上調達して、時価総額・数千億円以上で上場」がひとつの基準となった。IPO(新規株式公開)の位置付けも、未上場時にできる限り拡大してから市場に出ていくという考え方に変化した。

21年を象徴する出来事は、「PaidyのM&A、ビジョナルのIPO」の2つだ。共通するキーワードは「海外」。米ペイパルによるPaidyの3000億円の買収は、従来の国内未上場企業の買収金額からすれば異次元の規模だった。また、ビジョナルの海外投資家による大量保有(グローバルオファリングで海外機関投資家比率約89%)も、米キャピタル・グループがIoI(取引の意思表明)を出すなど、従来の東証マザーズ市場には見られない手法で上場した。2つの事例に共通するのは、海外事業会社、海外投資家に日本のスタートアップが評価されたことだ。

海外事業会社、海外投資家の参入は、VCにとってはポジティブだ。投資時の企業価値と売却時の企業価値の差分がキャピタルゲインだ。スタートアップにとって、調達手法として資金の出し手が増えたことで、事業上で大きな勝負ができるため、成長の規模が大きくなるからだ。

また、数百億円規模の調達がごろごろある米国と異なり、数億円規模の調達で事業や企業を大きく成長させてきた従来の日本の起業家達は優秀だったと言える。現在の日本の起業家達が、海外投資家をはじめとした資金調達力を手にしたことで、さらに大きな成長が期待できるのではないか。

今後10年、20年までを視野に入れると、起業家の目線はさらに上がっていくだろう。レイターステージ、グロースステージの資金の出し手が、上場株という越境、海外という越境という2つの流れが続き、時価総額数千億円から1兆円を目指すまで上がるだろう。米テスラの時価総額がトヨタ自動車を上回ったという事例が、トップティアの大企業をも超えていけるという思いにつながるのではないか。

もうひとつは世界を席巻するレベルでの海外進出だ。世界の資金、人材を巻き込む中で、「日本発世界」が出てくる土壌が作られ、長期的な視点では実現できると思っている。最後に「リアル産業への越境」だろう。これまでアセットヘビーな事業をスタートアップが手掛けなかったのは資金がなかったからだ。

現在は、場合によっては上場企業よりも調達できるスタートアップがおり、必ずしも「軽い事業」だけではなく、宇宙やエネルギーといった「重い産業」へという広がりも生まれている。脱炭素といった世界的な物差しの変化を追い風に、「リアル、かつ、重い産業」に挑むスタートアップも出てくるだろう。(談)
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文=Forbes JAPAN編集部

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