「環境教育をサポートし子どもたちの未来を育む」
コクア・ハワイ・ファウンデーション 代表
KIM JOHNSON / キム・ジョンソン
ノースショアの海岸近くにある小学校を訪れると、オーガニックなサーフミュージックで世界的に知られるオアフ出身のミュージシャン、ジャック・ジョンソンとその妻のキムが出迎えてくれた。
彼らが学校やコミュニティでの環境教育をサポートする非営利団体「コクア・ハワイ・ファウンデーション」を立ち上げたのは2003年のことだ。
「私は高校で数学の教師をしていて、その後はジャックの音楽活動の手伝いをしていましたが、彼が音楽の世界で成功したので、次は何か別の意味があることをしたいと思ったんです。環境問題については以前から関心がありました。それで元々教師ということもあって、子どもたちに対して何かできないかと考えたのです。その当時、環境教育を行うグループはハワイにはほとんどありませんでした。そこで、ネガティブに反対を唱えるのでなく、ポジティブな姿勢で環境問題に対してアクションを起こそうと思ったんです」とキム。
ちなみに“コクア”とはハワイ語で“助け合い”の意味。人々が助け合って行動することで、美しいハワイを次世代に引き継いでいきたいという思いが込められているという。
彼らの活動は多岐にわたっている。例えば“3R’sスクール・リサイクリング”は、Reducing(無駄を減らす)、Reusing(再使用)、Recycling(再利用)という3つのRを奨励するもの。この3Rを成し遂げた子どもたちへのご褒美として、その学校にジャックが行き教室で歌を披露することもあるそうだ。またプラスチックの有害性について説き、その使用量を減らすためのプログラムもある。
06年から始めた“アイナ・イン・スクール”は、学校の菜園で子どもたちと一緒にオーガニック野菜を育てたり、給食の残飯を利用しコンポストのつくり方を教えるというもの。現在オアフ島の150余りの学校で行われているこのプログラムを始めたきっかけを、キムはこう語った。
「あるとき、私たちはどうやって食べ物を得ているかという話をしていたら、ある子どもが、ボートが港にやってきて、トラックが店に運んで、それを買って家の電子レンジに入れて温めて食べるって(笑)。ハワイはほとんどの食料の供給をメインランドに頼っているから、そう思うのは無理ないかも。それで農場や酪農場に見学に連れて行ったら、みんな『わ~、バターやクリームって自分でつくれるの?』ってびっくりしてた。食べ物がどうやって生産されているか、その流れを子どもたちがきちんと理解することが大事だと思いました」
アイナはハワイ語で大地、つまり食糧を得る場所。今回の取材中も、土に触れ、自ら育て収穫して食べるという体験を、子どもたちは目を輝かせながら楽しんでいた。
このプログラムでは教師をトレーニングするシステムを取り入れ、ファウンデーションのスタッフが直接指導することなく、多くの学校で同時に実施できるようにもなっている。
「自分はこの美しいノースショアで生まれ育ち、小さいころから自然に教わってきたことがたくさんある。それと同じ経験を子どもたちにもさせたい。僕たちの活動の目的は、子どもたちが自分自身で学び判断するチャンスを提供すること。それと同時に大人たちにも、その重要性を理解してもらうこと。菜園での体験は彼らにとって学んでいるという感覚はないかもしれない。でも自分がどんな世界に育っているかを、体で感じることはできると思うんだ」とジャック。
03年に活動を始めたころに学んだ子どもがいまは高校生になり、率先して小さな子どもに同じことを教えるという状況も生まれているという。
「子どもたちの目を通して人生の喜びを知ることができます。逆に私たちが学ぶことも多いですね」。その成果は確実に実を結び始めている。
子どもたちに野菜がどのように育つのかを教える「アイナ・イン・スクール」はオアフ島の3分の2の小学校で行われている。
キムは学校の菜園での野菜づくりを通してハワイ特有の植物や、その歴史などについても教えている。
ファウンデーションの活動は主にキムがメインで行い、プロモートや資金的なサポートを行うためにジャックは「コクア・フェスティバル」というチャリティコンサートを毎年行っている。
子どもたちは野菜づくりと同時に、栄養学や農業についても学ぶ。