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イノベーション・エコシステムの内側

photo by Tomohiro Ohsumi / Gettyimages

企業価値約20億米ドルのルクセンブルク発のユニコーン企業「OCSiAl」は、全世界の単層カーボンナノチューブ生産量の97%を占める年間80トンの生産能力を誇り、アメリカ、中国(深圳・上海・香港)、ロシア、インド、日本、韓国、ヨーロッパなどに拠点を持つ世界最大の単層カーボンナノチューブメーカーだ。そのOCSiAlに出資したのが日本のダイキン工業(以下、ダイキン)だ。

海外スタートアップとのオープンイノベーションを目指す日本企業も多いが、ミーティングを行ってもスピード感が合わず、その後の具体的アクションまで話が進まないまま止まってしまうという課題もよく耳にする。

そこで、OCSiAlとダイキンがどのような経緯でオープンイノベーションを成功させたのかを伺った。

時流に乗る ルクセンブルクのオープンイノベーション


ルクセンブルクといえば真っ先に思い起こすのが一人当たりのGDPの高さだろう。20年以上にわたり世界1位に君臨しており、まさに金融国家というイメージが強い。しかし、ルクセンブルクはこの結果に奢ることなく、常に時代の流れを読み、新たな策を講じてきた。

ピエール・フェリング駐日ルクセンブルク大使は「一般的にルクセンブルクの産業としてイメージされる金融サービスだけでなく、エンジニアリング、ICT、宇宙といった高度なテクノロジー分野でも交流が活発化しています。多言語国家であるルクセンブルクは世界に開かれており、その環境と考え方は、変化の激しい現代において新たなビジネスチャンスを積極的に獲得しようとする企業の国際オープンイノベーションを促進するものです。また、ルクセンブルクと日本の関係は非常に良好で、企業が相手国で事業展開する際の強固な基盤となっています」と語った。

このような柔軟な対応を得意とする背景にはその立地や歴史が少なからず影響しているようだ。ルクセンブルクの面積は神奈川県と同程度の約2500平方kmで、人口も僅か62万人ほどの小国である。さらに周囲をフランス、ドイツ、ベルギーに囲まれており、かつてはスペイン、フランス、オーストリアなどの支配を受けた歴史がある。大国の影響を受けざるを得ない状況の中で、ルクセンブルクは国を閉じて守るのではなく、あえてオープンにすることで勝機を得てきた。

例えば、言語はルクセンブルク語以外にもフランス語、ドイツ語、英語が通じるし、先進国の中でも税率を有利にしたことでヨーロッパ進出の拠点としての地位を確立。他にも、国境を超えた金融取引を可能にしたり、小惑星資源の所有権をルクセンブルクに進出した外国企業にも与えるようにしたりするなど、いち早く法整備にも取り組んできた。

この姿勢は技術の導入にも表れている。ルクセンブルク貿易投資事務所 エグゼクティブ・ディレクターの松野百合子氏は「ルクセンブルクのような小国にとって、技術の導入に国境は関係ありません。OCSiAlはロシアの研究者の技術をもとに創業されたルクセンブルクの企業の一つであり、またルクセンブルクの大手エンジニアリング会社、ポール・ワースがドイツの水電解槽スタートアップの技術を製鉄の脱炭素戦略に取り入れ出資を行った例もあります。国内外のフィンテック企業のサービスが大手金融機関により積極的に採用されています。国際オープンイノベーションはルクセンブルクにとっては必然と言えます」と語った。

松野氏やルクセンブルグ太子などの集合写真
ピエール・フェリング駐日ルクセンブルク大使(左から2人目)、ルクセンブルク貿易投資事務所 エグゼクティブ・ディレクターの松野百合子氏(右)

文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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