日本酒の酒蔵を取材していると「江戸時代から続く旧家」であったり、「現在X代目の当主」などというフレーズにしばしば出合う。つまり、日本酒づくりは往々にして“家業”であり、スタートアップでビジネスを起こそうという事業者は非常にレアだ。その背景には、酒づくりが免許制であることや、日本酒が種々の伝統文化と結びついていること、複雑な流通システムなどさまざまな事情がある。が、壁があればそれを乗り越えようというフロントランナーもまた、必ず現れる。
SAKE HUNDREDは「心を満たし、人生を彩る」ことをミッションとして18年にローンチ。自ら蔵をもつのではなく、全国から厳選した酒蔵を醸造パートナーとして定め、酒質や味わいの設計をともに行うことでオリジナリティのある日本酒を生産する、日本酒のラグジュアリーブランドだ。
そのフラッグシップモデルがこの「百光|BYAKKO」。「100年先まで光照らすように」と名づけられたこの酒は、山形県で有機栽培された出羽燦々を18%まで精米。
「CRYSTALLINE SAKE」とラベルに表記されているように、圧倒的な透明感が身上の純米大吟醸酒である。
「すっきりとした透明感があるのに、華やかな果実のような香りとバランスのよいうま味が特徴的ですね」と語るのは日本料理店「龍吟」の支配人である岩尾朋だ。
「上品ですが、存在感もあり、料理に寄り添う酒という印象。ウニなどミネラル感の強い食材ともあうし、提供温度を変えることで、これから秋に向けて芋や栗など甘味の強い食材とも相性がよいでしょう」
「龍吟」といえば、誰もが認める日本料理の最高峰であるが、そのメニューにもこの「百光|BYAKKO」はオンリストされている。いわゆる老舗酒蔵とSAKEHUNDREDという新進が並ぶのは、「真によいものならば先入観やこだわりく取り入れる」という「龍吟」ならではの美意識のなせるセレクトであろう。
この日、「龍吟」のメインダイニングには「龍吟雲起」と書かれた扁額がかけられていたが、これは龍のように大いなる存在が行動を起こせば、雲が起きる。すなわち自然界をも動かすことができるという禅語だそうだ。そしてこの言葉は「虎嘯風生(とらうそぶけばかぜしょうず)」と続く。
保守的な気風の残る日本酒業界にあって、SAKE HUNDREDという虎は龍と出会い、これからどんな風を巻き起こしてくれるだろうか。大いに期待したい。
容量|720ml
度数|15.7%
価格|27500円(税込み参考小売価格)
問い合わせ|SAKE HUNDRED