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2021.11.04 12:00

ベテラン議員が涙のむ 自民も野党も時代に乗り切れなかった衆院選


自民党で、ツイッター効果を知らない議員はいない。ただ、これを使いこなすためには、「割り切り」と「根気」が必要になるという。自民党幹部は「秘書なんかに任せていたらダメ。発信するだけで、返信しないのもダメ。乱暴な言葉でもいいから、どんどんコメントしていかないと、フォロワーは増えない」と語る。コメントは「乱暴」とも思えるような言葉でも構わないという。この幹部は「むしろ、炎上した方がフォロワーも増える。悪名は無名に勝るだよ」と話す。そして、マメにコメントする根気が必要だ。「本会議でツイートしてたら、注意されちゃう。ツイッターをうまく使っている議員らは皆、移動の時間や会議を待つ時間など隙間の時間ができたら、すぐツイートしている」という。

「ツイッター政治」を展開し、政治家がフォロワーに返信することで、明らかに有権者の政治への参加意識が強まるという。55年体制のころは、「資本主義か社会主義か」「改憲か護憲か」というわかりやすい対立軸があったが、今回の立憲民主党や共産党の退潮に見られるように、従来の対立軸では有権者に十分アピールできなくなっている。その一方、ツイッターは基本的に投稿文字数が140字に限られているため、直感的なフレーズに傾きがちだという。自民党幹部は「複雑な利害関係を整理し、判断するのが政治家の仕事だ。ツイッターに頼りすぎると、政治が乱暴になる気がする」と語る。

今回の選挙戦で勝利した自民党も、この「世代交代」の要求を十分受け止めているとは言い難い。有権者に絶大な人気を誇る河野太郎氏は先日の自民党総裁選で、岸田文雄首相に敗れた。河野氏は総裁戦後、党広報本部長に就任した。いわば、「ヒラ役員」という位置づけで、総裁選で自分よりも票数で下回った高市早苗氏が党4役の党政調会長に就任したこととは対照的だ。河野氏を支持した議員らからは当時、「(格下の)広報本部長なんて受けちゃダメだ」という声が上がったという。自民党幹部は、それでも河野氏が広報本部長への就任を受け入れた背景について、「派閥トップの麻生太郎党副総裁から、一匹狼のようなやり方では、絶対に総理になれないと言われたようだ。河野氏も、現実の世界で汗をかいて、自分を支持してくれる人間を増やす必要があると思ったのだろう。自民党がそれだけ古臭い体質だということだよ」と語る。

「政治家の世代交代」「選挙の世代交代」を求めた有権者の動きを、自民党ですらまだ受け止め切れていない。

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文=牧野愛博

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