それほど多い数ではないように聞こえるかもしれない。だが、問題はこの人数が、前年までのどの年よりも多いということだ。2006~20年にニューヨークでこのスピロヘータ目に属するレプトスピラ菌への感染が報告された人数は、合計57人だった。
9月22日までに確認された感染者のうち、13人は腎臓や肝臓の機能障害で入院。2人は重度の肺疾患を患い、1人が死亡したという(その後の報道によると、今年の感染者数は10月16日現在で15人となっている)。
この感染症の原因として、最も多いのは何だと思うだろうか?それは、ネズミの尿だ。感染したネズミが排泄する尿には、病原性を示すレプトスピラ・インターロガンスが含まれる。
その尿は土や水、食べ物など、あらゆるものをレプトスピラ菌で汚染する。レプトスピラ菌の宿主はネズミ以外にもいるが、ニューヨークで最も多いのは、ネズミだと考えられる。
ネズミは尿意を感じれば、所構わず排尿する。感染したネズミの尿で汚染されたものがヒトの粘膜、または開いた傷口に接触すれば、あるいはこの菌で汚染されたものを食べたり飲んだりすれば、ヒトはレプトスピラ菌に感染する。不幸中の幸いといえるのは、感染したヒトが他のヒトにうつすのは非常にまれだということだ。
感染から発症までの期間は、大抵2日~4週間とされる。米疾病対策センター(CDC)は、この感染症の症状は非常に多岐にわたり、他の病気と間違えられる可能性があることに注意が必要だと警告している。
主な症状には、発熱(高熱)、頭痛、悪寒、筋肉痛、嘔吐、黄疸、目の充血、腹痛、下痢、発疹などがある。また、レプトスピラ症の進行には2つの段階があり、第2段階まで進行した場合には、かなり深刻な状態になりうる。
重症化したレプトスピラ症の患者は、肝臓や腎臓の機能に障害が起きたり、呼吸器系に深刻な問題が発生したりするほか、脳の周りを覆う髄膜に炎症が起きる髄膜炎を発症するなどし、命の危険もある。できる限り早く診断、治療を受けることが重要だ。
レプトスピラ菌の感染は、血液や尿、髄液で確認することができる。抗生物質(ドキシサイクリンやペニシリンなど)を早期に投与することができれば、重症化を防ぎ、回復を早めることができる。また、すでに重症化していた場合でも、抗生物質の静脈内投与で、合併症などによる死亡を回避できる可能性がある。
感染者が今年、目立って増加したのは、新型コロナウイルスのパンデミックにより、昨年中にレストランの大半が休業していたことの影響が大きい。ネズミは飲食店以外のどこかで、必死に食べるものを探していたはずだ。そして、市内の衛生状態はこの間、大幅に悪化していた。ネズミが多く生息しているのが、衛生状態が良くない地域であることは明らかだ。