テクノロジー

2021.10.18 11:30

4.5万円の「培養肉ビーフパティ」を15円に? 名大発ベンチャーNUProteinの挑戦


培養肉の価格を下げるには?


この課題に取り組み、成長因子にかかるコストを大幅に下げる技術を開発したのが、名古屋大学(名大)発のスタートアップ「NUProtein」(徳島市)だ。

代表取締役 CEOを務める南賢尚は、パナソニックで知財開発やコーポレートベンチャー投資、インキュベーション業務に携わった経験を持つ。産学連携の特任講師として名大に着任した際に、小麦胚芽から成長因子を合成する技術を持つ、研究者の多田裕昭(現NUProtein CTO)に出会った。

南自身は研究者ではなく、サラリーマン出身の起業家だ。多田との出会いから、成長因子が培養肉や再生医療に使用されていることを知り、同時に多田の持つ技術のポテンシャルの大きさに気が付いた。

「社会的に重要な技術を、アカデミアの中に埋もれさせるのはもったいないと強く思いました。ただ、多田は研究者なので経営を担う人材がいない。そこで、自ら担当しようと決意しました」

こうして南は、2016年にNUProteinを立ち上げた。企業名のNUは「Nagoya University」の略である。当初の拠点は神戸市だった。

「再生医療分野での活用を第一に考えていて、医療産業都市である神戸市でスタートしました。しかし、医療分野で活用するには安定供給や信頼性の面で課題も多く、事業化には時間がかかるな、と感じたんです」。そのため、より早く社会で活用されるようにと、注力分野を“培養肉”へシフトした。

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「2016年インデペンデンツクラブ大賞 地域大賞」を受賞する南(右)

「成長因子を安く、安心・安全に活用してもらうことでバイオの『水道哲学』を実現したい」という南。水道哲学とは、パナソニックの創業者・松下幸之助が唱えた経営哲学。商品やサービスを、「水道水」のように誰もが手軽に安価で手に入れられるようにすることで、豊かな社会を目指す考え方である。

南は、培養肉をより安く、安心・安全に提供できることを目指している。
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文=尾田健太郎 取材・編集=田中友梨

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