宇宙で実証実験を行う、“革新的衛星技術実証プログラム”の目的とは
金子:2019年に打ち上げた革新的衛星技術実証1号機に続き、今年10月に打ち上げる予定の2号機では、公募された中から選定した14の実証テーマが搭載されます。具体的には超小型衛星とキューブサットが4機ずつ、部品などが6つで、それぞれが実証実験を行う予定です。例えば実証テーマの1つに、ソニーセミコンダクタソリューションズが開発した〈SPRESENSE(TM)〉というボードコンピューターをJAXAの衛星に搭載して、宇宙空間でどれくらい放射線への耐性があるのかを調べたりするSPRという実験があります。宇宙には地球上と違って放射線が多くあり、機器に悪影響を与えますから。
為末:SPRは、今後の宇宙空間での使用を想定しているということですか?
為末大さん(左)と、金子グループ長(右)
金子:そうですね。今回の実証実験を足がかりに、いずれは人工衛星や月探査用のローバーへの搭載なども考えられています。月や火星に行くと、距離が離れる分だけ通信時間が遅れるんですね。特に火星では何十分というオーダーで遅れてしまう。するとリアルタイムで地上から指令を出すことができなくなります。そのためにコンピューターが自分で考えて動かなければいけない。自律機能と呼びますが、そのためには性能が高く、宇宙でも使えるコンピューターが必要となるわけです。
為末:なるほど。他にはどんな実験があるんですか?
金子:例えば、微小なスペースデブリの観測を行う実験があります。それは千葉工業大学が開発したASTERISCというキューブサット(11センチ×11センチ×34センチ)で行うのですが、宇宙空間に膜を張って、そこにどれくらいのデブリが当たるのかを観測しようという試みです。大きなデブリがどう地球を回っているのか、というモデル化はできつつあるんですが、微小なデブリのデータはないんです。ASTERISCはその小さいデブリを観測できます。
千葉工業大学が開発した宇宙塵探査実証衛星ASTERISC
為末:宇宙空間に膜を張って、そこにぶつかったものの数や量をチェックするというイメージですか?
金子:そうですね。膜を広げて、そこにセンサが付いているので、どのくらいの大きさのものがどのくらいのスピードでぶつかったのかが観測できます。
為末:膜の大きさはどのくらいなんですか?
金子:大体30センチ×30センチくらいですね。
為末:もっと大きい膜を想像していましたが、そんなに小さい膜にデブリがぶつかるんですね。相当、デブリがいっぱいあるということなんだ。
革新的衛星技術実証2号機は、「小型実証衛星2号機(RAISE-2)」(6つの実証テーマを搭載)と、8機の超小型衛星・キューブサットで構成されている