SDGs達成を阻む「自虐的な側面」
以上のことから、達成度ランキングの結果に一喜一憂してはいけないことがわかる。ただ、日本人が古くから持つ「自虐的な側面」がSDGs達成にブレーキをかける恐れがあることは否めない。
興味深い調査結果と指摘がある。米国の『USニューズ&ワールド・レポート誌』が2019年に発表した「ベスト・カントリー・ランキング」で、日本が過去最高の2位に浮上し、前年5位から順位を大きく上げた。2021年の最新のランキングでも、日本は2位となっている。
2021年の総合1位はカナダ。その後にドイツ、スイス、オーストラリアと続く。アメリカは6位、中国は17位だ。日本は同ランキングが重視している「起業家精神の高さ」でトップに立ち、経済、健康や文化などの分野で高評価となった。
同誌では、このような高い海外評価に対し「日本人は世界で最も自国を低く評価している」という結果(U.S. News&World Report、BAV Consulting、Wharton Schoolの共同調査)も示された。それによると、日本人は、自国の生産性・安定性・文化的重要性が、世界の他の国々よりも低いと考えているらしい。
この日本人の「自虐的な感覚」は、観光や海外投資に長期的な悪影響を及ぼすのではないかと、同誌は懸念を示している。
日本人はそろそろ根拠のない自虐性から脱却し、日本の、また日本人の良さ・強さを改めて認識し、世界の中で客観的に位置付けていくアプローチが必要だろう。
「ガラパゴス化」に注意
日本にはSDGsを加速させるためのポテンシャルがある。
まず、少子高齢化や地域の過疎化という課題がある「課題先進国」でありながら、同時に「課題解決力」も備えている点だ。日本企業は、SDGsの各目標を達成するための高い技術力と商品開発力があると、世界からも期待されている。
また、日本には古くから「和の精神」もある。これはSDGsの目標17「パートナーシップ」が根づいている証拠だ。
今後さらに、これらのポテンシャルを発揮するためには、柔軟に世界の動きに対応する必要があるのだが、そこが日本の課題でもある。SDGsの「解読」作業に時間をかけ、国内の横並び志向で対応する、といった日本独自の速度感と態度を継続していては、SDGsの推進でもガラパゴス化してしまうリスクがあると筆者は危惧している。
「ガラケー(ガラパゴス・ケータイ)」。これは特殊な進化を遂げた日本製携帯端末に対する自虐的表現だ。日本の携帯は、日本独自の通信方式(PDC方式)で高機能の国内競争をしている間に、欧州のGSM方式が標準規格になってガラパゴス化した。
日本では、モノだけでなくさまざまなルールや規格についても、ガラパゴス化してしまう危険がある。変化が激しい世界の動きについていけなくて国際標準からかけ離れてしまい、世界には通用しない日本独自の制度が残ってしまうのだ。