ビジネス

2021.09.27

東大、ボスコン、デロイトを経たエリートが「マンホール」事業に挑むワケ

ホール・アース・ファウンデーション CEO 森山大器


WEFは、株式会社ではなく、NPOだ。一般的に、NPOは良いことをやっているが儲からないというイメージがある。スタートアップの時価総額は、収益が上がっていることを前提に評価されるため、いつも利益が最優先で、社会へのインパクトはその次だ。

しかし、森山氏が目指すのはその逆である。実際に、WEFでは仮想通貨であるトークンを発行しており、その時価総額ランキングはWEFの収益とは無関係。それが、インパクトが正しく評価される形だと考えているのだ。

マンホールのイベントでは、多くの情報が集まった。森山氏は、さらに各自治体の情報を集めるのも面白いという。前述したステージ3になると、WEFは地域住民と共に未来の街のあるべき姿を描くための情報プラットフォームになっていく。

森山氏が駐在経験のあるイスラエルには、6000あるスタートアップのデータが細かく記載されたデータベースがあり、それをもとに国をアピールし、小さい国ながら外貨を集めてきた。日本も同様に、1400ある自治体のデータベースをつくれば、それぞれの自治体のユニークさを訴求できるだろう。社会への大きなインパクトである。

本来、インフラ整備にしろ、町の管理にしろ、地域の人たちは自分でやっていた。町を見回り、壊れたところを見つけたら情報を共有していたのだ。それが、社会構造上難しくなってしまった。だからこそ、技術力と仕組みでもって地域コミュニティが本来あるべき姿に変えていきたいという。

自然に考えて、人間が『こうありたい』という姿になれること、素朴なことができる社会だと嬉しいですよね──。森山氏が目指す社会は、やはりシンプルだった。


森山大器◎ホール・アース・ファウンデーション Co-founder and CEO。ボストンコンサルティンググループにて、電気通信、銀行、証券、自動車、エネルギー、 製薬などの幅広い業界の経営コンサルティングに従事。デロイトトーマツベンチャーサポートの創業期に参画し、技術ベンチャー支援担当、経営企画部長、政策事業部長などを歴任。10人から100人規模のプロフェッショナルファームへ成長する中心的役割を担う。その後、イスラエルのテルアビブに移り、デロイトイスラエルにて3年間駐在。イスラエルにおける最初かつ唯一の日本人駐在員として日本企業向けに技術探索支援を、イスラエルのスタートアップ向けに資金調達/M&Aアドバイザリーサービスを提供。東京大学・大学院にて物理工学(量子コンピュータ・量子光学)の修士号を取得。学部卒業時、最優秀卒業論文賞受賞。米国シカゴのIIT Institute of Designにて人間中心デザインの修士号を取得。

文=伊藤みさき 写真=藤井さおり、インタビュー・編集=谷本有香

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