その結果、ベンチャーキャピタル業界では、この分野への投資意欲がこれまで以上に熱を帯びている。
スペースXやロケットラボのような先駆者たちがもたらした最大の進歩は、ロケットの打ち上げの低コスト化だ。その結果、彼らに続く企業が続々と生まれている。
例えば、ロングビーチに拠点を置くRelativity Spaceは、巨大な3Dプリンターでロケットを製造することで、コストを引き下げようとしている。シアトルのSTOKE Space Technologiesは、スペースXのようにロケットの第1段部分のみを再利用可能にするのではなく、2段目も再利用可能にして、完全に再利用可能なロケットの製造を目指している。
1990年代のドットコムブームの背景には、コンピュータの普及と光ファイバネットワークの大規模な整備があったが、投資家は宇宙エコノミーにおいても同じ流れが起きると予測している。
Space Capitalのデータによると、2021年上半期に宇宙セクターでは合計230件のディールに約150億ドル(約1兆6500億円)が注がれており、2013年以降の累計調達額は370億ドルに達している。さらに、SPAC(特別買収目的会社)を活用したエグジットの増加が、投資熱に拍車をかけている。
STOKE社の共同創業者のアンディ・ラプサ(Andy Lapsa)は、「現在は宇宙のエコシステムのルネッサンス期だ。今ほど宇宙分野の投資機会が有望視されている時代は無かった」と語る。ファウンダーズ・ファンドの投資主任を務めるデリアン・アスパロホフ(Delian Asparouhov)も彼と同意見だ。
「私たちは今、スペース2.0の始まりに立っている。投資家たちは、宇宙をマネタイズするための新たな機会を探している」と、アスパロホフは語る。
サービスとしての微小重力
アスパロホフは投資家であると同時に、宇宙関連のスタートアップの共同創業者として、この分野のポテンシャルに魅了されている。彼が共同創業したサンフランシスコ本拠の宇宙開発企業Varda(バルダ)は、7月のシリーズAラウンドで4200万ドルを調達し、ロケットラボに3回の打ち上げを依頼した。
Vardaは、「サービスとしての微小重力(microgravity as a service)」の実現を目指す企業で、軌道上に設置した宇宙工場で、バイオプリントした臓器や特殊な半導体など、微小な重力下でしか実現できないプロダクトの製造環境を構築し、外部の企業に提供する。