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2021.09.23 08:00

失われたインバウンドを取り戻す コロナ禍「越境EC」のヒント

Getty Images

コロナ以前に約6年間中国・上海に駐在していて実感したのは、中国の生活にはECが欠かせないということ。生活に必要なあらゆるものが、スマホで瞬時に買えてしまう便利さは、日本を上回っていると感じた。

食事のデリバリーはもちろん、ネイリスト、マッサージ師、家政婦も、スマホで商品を購入するのと同じように、発注、決済ができる。経産省によると2020年の日本企業のEC化率は約8%だが、中国は約30%(JETRO調査)。

世界でもECが進む中国でさえ3割という見方もできるが、6月18日や11月11日の大セールの時期に、会社やマンションの入り口にできる宅配荷物の山を見ると、都市部でのEC利用率はかなり高いように思える。

中国でECが盛んな背景には、デジタル普及率の高さがある。中国のインターネット規制機関Cyberspace Administration of Chinaによると、ネット70.4%、モバイル99.7%、オンライン決済は96.9%だ。

また、アリババの淘宝(タオバオ)のような、個人でも直接顧客に商品を売ることができる、CtoCのECが早くから盛んだったことも背景にある。

勢いづく2つのトレンド


コロナ禍でますます拡大した中国のEC市場。新潮流を観察すると、インバウンド消費が生まれない現状に不安を抱える日本企業にとっても、ヒントになるEC手法がある。

最近のトレンドの一つとして、ライブコマースが挙げられる。これはライブ中継を通してリアルタイムに商品を販売するECで、KOL(Key Opinion Leader)、KOC(Key Opinion Consumer)と呼ばれるインフルエンサーが、次々と商品を紹介し、販売するもの。

トップKOLは、数百万のフォロワーを有し、1度のライブ中継で、数億円を売り上げる。最近では、企業の創業者や経営者が自ら出演し販売するケースもあり話題を呼んでいる。

もともと中国では、「口コミ」が商品やサービスの購入決定に最も影響力を持つ。かつて、粗悪品や模倣品が横行した時代を経て、「顔の見えない企業の広告」よりも「使った人の推奨」の方が第三者のリアルなオススメとして信頼できるという経験的概念が背景にあるのだ。

もう一つのトレンドとして、「インタレストコマース」がある。アリババの天猫(Tmall)や京東(JD.com)など、モール型の大型ECは、「人が欲しいモノを探して買う」というプラットフォームだったが、インタレストコマースは、「モノが人を探して買われる」形態だ。

中国ではすでに、SNSから生まれたソーシャルコマースが急拡大しているが、中でも、急速に成長している短尺動画プラットフォームの抖音(douyin=若者に限らず、6億人が毎日長時間視聴している中国版TikTok)は、昨年EC機能を拡充し、2020年の流通取引総額は8兆5000億円規模とも言われている。

優れたレコメンドシステムによって、視聴者は、興味を持ったコンテンツを次々に見ているうちに、そこで紹介されていく商品に出会い、その場で購入できるので、「インタレストコマース」と呼ばれている。
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文=桜庭真紀 編集=露原直人

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