経産省の調査によると、20年の日本からの越境ECの購入額は1兆9949億円で、対前年比17.8%増となった。また、昨年11月11日の独身の日(W11)で販売された海外ブランド数は3万1766で、国別の販売総額では日本が1位であった。
例年でも人気の、化粧品、トイレタリー、ヘルスケア、食品・飲料が購入されており、コロナ禍でも大きな変化はないと見られる。
コロナによる9000億円の損出
とはいえ、コロナで失われたインバウンド消費は大きい。観光庁の訪日外国人消費動向調査によると、2019年、訪日中国人のインバウンド消費は1兆7740億円だった。うち半分は買い物に費やされたという。
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つまり、コロナ禍で日本の小売業は約9000億円を失ったと言えるが、この損失を補填するために、越境ECを活用したいという企業も多いだろう。
しかし、越境ECでは「日本に旅行した際に、使ってみて気に入った」ことが購入のきっかけになっているものも多い。現在の渡航制限下では、訪日中国人が日本の商品を試す機会が失われ、新商品や中国で認知のない商品は、販売が難しいという課題がある。
実際「中国人に商品を試してもらったり、友達に紹介してもらう機会を作りたい」という日本企業は多く、最近では、越境ECで販売する商品を中国のオフライン店舗で紹介するOMOマーケティングや、在日中国人のKOL、KOCを活用した越境ECも注目されている。
天猫や京東など大型ECモールへの出店を検討する企業もあるだろうが、コストやプラットフォーム側の審査などハードルが高い。今回紹介したように、スモールスタートできる「ソーシャルコマース」や「インタレストコマース」といった選択肢から始めてみるのが良いのではないだろうか。
桜庭真紀(さくらばまき)◎株式会社電通トランスフォーメーション・プロデュース局勤務。中国ビジネスサポートをミッションとする社内組織 dentsu China Xover Center(通称CXCシーバイシー)に所属する。マーケティング・ディレクターとして、日本企業の中国市場進出、越境EC、インバウンド、中国企業の日本市場進出を担当。2014~2019年上海電通に駐在し、マーケティング・プランニング部門を統括。