ダイヤモンドで爪磨き。特殊技術をBtoCに転用

ジャスト代表取締役社長 岡崎淳一

めっき処理を手がける山形県のジャストが、新たな事業展開を進めている。このほど一般消費者向けの商品開発・販売を担う事業部を設け、第1弾として天然ダイヤモンド粒子を使用した爪やすり「クラフテムセルフネイリスト」を開発した。

同社は産業向けめっき処理のなかでも、金属表面にダイヤモンドをコーティングする技術が強み。大きさが異なるダイヤモンドで3層の皮膜形成をする独自の特殊技術をもつ。高い滑り止め・摩擦の効果を実現する同技術は、加工機械など製造業向けだけでなく、精密ピンセットといった繊細な作業が要求される医療の手術現場で応用が進んでいる。

今回の爪やすりは、その技術特徴を生かした商品。トライボロジー(摩擦学)を専門とする東北大学大学院工学研究科の堀切川一男教授の支援を受けて開発した。粒径0.3mm~0.25μmのダイヤモンド粒子を採用しており、優しい力で簡単に爪を整えることができる。

21年4月には、クラウドファンディングの「makuake」に出品。価格は1本あたり7700円と高価だが、購入総額は約262万円と目標を13倍上回った。ジャスト代表取締役社長の岡崎淳一は、「安価な商品ではないが、今回のテストマーケティングで需要はあると確信した。特に贈答品としての販売が見込める」と自信を見せる。

クラウドファンディングやECなどのツールの普及によって、BtoBを本業としていた町工場などの小規模組織が、低コストでリソースをかけずに自社商品を展開できる環境が整ってきた。ジャストでは今後、「クラフテム」のブランド名で、ダイヤモンドめっきの技術を生かした毛抜きやおちょこを展開していく計画を立てている。

「チャレンジしてみるという姿勢が大事。クラフテムは私ひとりで始めた事業だが、新たにデザイン担当の人材も採用した。まずは3つの商品で年間1000万円の売り上げを目指したい」


おかざき・じゅんいち◎山形市出身。函館大学商学部卒。イリソ電子工業、上村工業を経て2002年、家業のジャストに入社。取締役企画室長を務め、08年12月より現職。「Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARD 2019-2020」ではクラフトマンシップ賞を受賞。

文=眞鍋 武 写真=大星直輝

この記事は 「Forbes JAPAN No.084 2021年8月号(2021/6/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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