モビリティ需要が旺盛。ワイヤレス給電の導入進む

ケーブルが不要となる利点が注目されて、スマートフォンなどで実用化が進んでいるワイヤレス給電。近年、大企業の参入が相次ぐなど市場が活性化しているが、社員数約90人と小規模ながら、この領域でひときわ存在感を放つ会社がある。埼玉県のビー・アンド・プラスだ。

約40年にわたりワイヤレス給電技術を培ってきた同社は、3代目の亀田篤志が社長に就任した2015年から「ワイヤレス給電で世界一」を掲げて、産業や分野にこだわらず新規の顧客をどんどん開拓。毎年100件ほどの新たなワイヤレス給電の試作開発を行っている。

会社の知名度はまだ世界一とは言えないが、グーグルで「ワイヤレス給電」と打ち込めば、検索上位には必ずビー・アンド・プラスのサイトが表示される。

「ワイヤレス給電がより身近なものになってきた。いろんな領域で導入が進んでいる」と亀田は手応えを感じている。最近、顕著に増えているのが、モビリティ関連のニーズだ。産業向けでは、工場で需要が拡大しているAGV(無人搬送車)向けの案件が増大。また、商業向けでは、「シェアサイクルや電動キックボードなど、小型のバッテリーを積んだ移動手段での引き合いが増えている」という。

例えば、シェアサイクルでは、多くのサービスが電動アシスト自転車を採用しているが、ワイヤレス給電はまだほんの一部しか導入されておらず、「ほとんどの業者は、バッテリーが弱くなった自転車を車でわざわざ回収して充電をしているのが実情」。駐輪場にワイヤレス給電が導入されれば、ユーザーが自転車を止めるだけで充電が完了し、人的コストや回収車による排ガスを減らせるため、需要は旺盛だ。すでに沖縄や愛媛などの観光地では、ビー・アンド・プラスのシステムを採用したシェアサイクルが稼働しているという。

「ワイヤレス給電のいいところは、使う人がバッテリーのことをまったく気にしなくて済むこと。小さいことかもしれませんが、みんなが苦労しないでよくなるという意味で、大きく世界を変えていけるんです」


かめだ・あつし◎1979年、埼玉県生まれ。北海道大学大学院量子集積エレクトロニクス研究センター卒。デンソーを経て2007年にビー・アンド・プラスへ入社。15年より現職。「Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARD 2018」ではグローバル賞を受賞。

文=眞鍋 武 写真=佐々木 康

この記事は 「Forbes JAPAN No.083 2021年7月号(2021/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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