こうした影響は、国を問わず、またほかの競技でもはっきり認められ、クリケットやラグビー、アイスホッケー、バスケットボールの国際試合の結果も相場を下押しすることがある。ただ、影響が最も大きいのはサッカーらしい。面白いことに、試合に負けた場合に相場が下がることはあっても、試合に勝った場合に相場が上がる例はあまり見られないという。
これはそれほど突飛な話ではないのかもしれない。スポーツの試合での敗北は、残念なことだが、そのチームが本拠を置く都市での殺人件数や自殺数の増加と関連していることがわかっている。そこから類推すると、大きなスポーツ大会の結果は観戦者の気分を左右することを通じて、取引行動にも影響を与えるということなのだろう。
引用したデータは、1970年代から2000年代初めまでのスポーツ大会の結果に基づくものである。そのため、市場の行動はそれ以降に変化し、以前のような関係は成り立たなくなっている可能性もある。一方で、こうした結果は国やスポーツの種類を問わずみられたため、結論はある程度信頼できるものだとも言えそうだ。
この研究論文はアレックス・エドマンズらによる「Sports Sentiment and Stock Returns」というもので、投資家の気分がさまざまな仕方で市場を動かすことを発見している。
一部の研究とは異なり、この発見は、市場が必然的に非効率であることを意味するものではない。大きなスポーツ大会の結果は前もってわからないので、そこでは必ずしも自由にお金を稼げるわけではないのだ。
ただ、より広い意味での結論は投資家にとって役に立つかもしれない。それは、経済ニュースが伝わった結果であれスポーツの試合結果への反応であれ、投資家のセンチメントの悪化は、一時的にせよ広範な市場に影響を与えうるということである。