経済・社会

2021.09.05 07:00

UAEなど産油国の温室効果ガス排出量 実質ゼロは達成可能か?


UAEではこの件について「政府のあらゆるレベルで」議論する予定だ。発表は、11月にスコットランド・グラスゴーで開催予定の国連気候変動枠組み条約締約国の第26回会議(COP26)前になるかもしれない。

2015年のパリ協定で採用されたように、世界の気温上昇を産業革命前と比べて1.5度以内に抑えるには、同会議の成功が欠かせないと広く考えられている。

国際エネルギー機関(IEA)によると、これまで温室効果ガスの排出量実質ゼロの誓いを立てた国や提案をした国は44カ国で、世界の二酸化炭素排出量の73%を占めている。しかし、この目標の達成を法的義務とした国はわずか10カ国で、その他の国では公式目標程度でしかない。

UAE気候変動・環境省の気候変動部を率いるカイス・アル・スウェイディは「多くの議論が重ねられ『実質ゼロを達成できる。これをやる、あれをやる』と言われているが、実際にはそれと逆の行動が見られる。私たちはそれとは違うことをしたい」と述べた。

カタールは排出量実質ゼロの目標を採用する意思をほとんど見せていないし、サウジアラビアのエネルギー相であるアブドルアジズ・ビン・サルマン王子は、今年IEAが発表した「Net Zero by 2050(2050年までに実質ゼロ)」の報告書を公に酷評し、「これは映画『ラ・ラ・ランド』の続編だろう。(…)なぜそれを真剣に捉えるべきなのか?」と発言した。

IEAの文書は、産油国にとっての大きな課題を詳しく説明している。IEAの試算によると、世界が2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロの目標を達成するためには、探査段階の石油・ガス開発が世界中で中止され、世界の石油消費量は2019年の日量1億バレルから2050年には日量2400万バレルまで低下し、天然ガスの消費量は55%低下して約1兆7500億立方メートルになる必要がある。

UAEや他の産油国が独自の排出量実質ゼロ目標を立てるかどうかにかかわらず、国の経済や気候変動において重要な要素は、産油国が産出している石油や天然ガスを消費する世界の他の国々が同じ行動を取るかどうかだ。

翻訳・編集=出田静

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