5G×メディア×スポーツの未来

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1984年のロサンゼルス以降、商業化著しい五輪という一大イベントはこれまでも常に賛否を呼んできた。新型コロナ禍に強行実施された東京五輪は、今後の五輪のあり方を再考させる契機となると思われる。

開催国の威信をかけた開会式は、最新のテクノロジーを披露するショーケースだ。ロス五輪で「ロケットマン」、つまりジェットパックを背負い、空から人が飛んできた際には、度肝を抜かれたもの。バルセロナでは、アーチェリーを放ち聖火台に点火した離れ業に驚愕し、北京では、聖火ランナーがスタジアムの側面を飛ぶように走る姿を観ては、どんなカラクリなのかと首をかしげた。

大変残念ながら東京五輪の開会式、閉会式ともに、驚くような演出はなく、最新テクノロジーの見せ場は、ドローンによる巨大な光の浮遊地球儀と、それらが織りなす東京五輪エンブレムぐらいだったのではないだろうか。

ちなみに後日、リハーサルを撮影した一般人からのSNS投稿により、この演出には複数のバリエーションが用意されていた事実が判明。不祥事で、開会式直前に担当者が次々と辞任に追い込まれるような緊急事態から、陽の目を浴びることなく終わった演出も多かったのだろうかと、想像を掻き立てられる。

「陽の目を浴びなかった」という点で言うと、特にNTTグループは歯痒い思いだろう。

というのも、NTTにとって、5Gの革新的な技術を披露する集大成が東京五輪になるはずだったからだ。

東京五輪スポンサーでもあるNTTは、これまで5Gを活用したサービスを生み出してきた。Jリーグと組み、まるでスタジアムにいるかのような応援ができる「デジタルスタジアム」や、同様にスポンサーだった19年のラグビーワールドカップでも、そのアップグレード版を提示。

しかし、満を持して挑んだ五輪は、新型コロナ禍で1年延期になった。さらに、スタジアムの模様を、5G通信網を使用することで各地に届ける予定だったパブリック・ビューイングは、世間の非難に晒され、密を避けるためにも早々にキャンセルとなった。

各会場においては種目の新しい観戦方法を提示しようとソリューションを用意していたものの、無観客開催により、どれも一般観戦者の目に触れることなく、五輪は幕を閉じた。

それでもNTTは、観客が誰もいないというにもかかわらず、いくつかの技術をほそぼそと実施してみせた。そこには静かに燃える炎のような、NTTの矜持もあったに違いない。

文=松永裕司 編集=露原直人

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