ビジネス

2021.09.01 18:00

自社システムを外販 同業の目線で製造DX支援

HILLTOP常務取締役 山本勇輝

アルミ試作品の切削加工を手がける京都府宇治市のHILLTOP(ヒルトップ)が、製造業のDXを支援する事業を本格化させている。生産現場での部品加工を自動化する加工プログラミングサービス「COMlogiQ」(コムロジック)を開発。機械専門商社の山善と販売業務提携契約を結び、2022年1月をめどにサブスクリプション型で提供する計画だ。

ヒルトップは、独自の生産管理システム「HILLTOP System」をもとに「24時間の無人加工で、新規5日/リピート3日で単品納入できる工場」を運営し、月に4000種の試作部品を展開している製造DXの先駆者。このシステムは、職人技だった加工技術を同社が35年かけて完全にデータ化したもので、新入社員でも1カ月で加工プログラミングを習得し、一般的に扱いが難しい5軸加工機でも使いこなすことができる。

COMlogiQでは、新開発のAIを用いた自動加工プログラム作成システムをHILLTOP Systemに連動させた。熟練の職人がいない生産現場でも簡単にものづくりができるようになる。

生産性の向上に加え、技能承継や人材不足といった課題の観点から製造業のD X支援に参入する事業者は多い。しかし、その多くはITベンダーであり、ヒルトップは製造業自身である点が大きな差異化のポイントとなる。徹底したユーザー目線で設計されていることはもちろん、運用面でも製造業の立場でサポートできるからだ。

実際、21年6月からCOMlogiQの説明会を開催しているが、「サービス単体で利用したいという声だけでなく、工場全体のDXを支援してほしいという要望もある」と常務取締役の山本勇輝はビジネスの広がりを期待している。「自分たちが切削加工をしていることが信頼の証しになっている。現場に寄り添いながら展開していきたい」。

さらに、山本は出島戦略として、同年7月に新会社「ThinkR」を立ち上げた。今後、COMlogiQを含む製造業支援はヒルトップから同社に移管し、外部資本を取り入れながらスケールさせる方針だ。


やまもと・ゆうき◎1980年、京都府城陽市生まれ。2006年、HILLTOPに入社。人事・ファクトリーマネージャー、経営戦略部長を経て20年より現職。「Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARD 2019」ではグランプリを受賞。

文=眞鍋 武 写真=アーウィン・ウォン

この記事は 「Forbes JAPAN No.086 2021年10月号(2021/8/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事