筆者が創業したリーダーシップIQの米国での最新調査「Employee Burnout In 2021」によると、「自社の従業員が現在、情緒的・メンタル的に充実していると感じる」と答えたリーダーはわずか25%にすぎなかった。かなり悪く聞こえるとは思うが、「CEOが夜も眠れなくなる問題」はこれではない。
問題は、リーダーのうち71%という驚くほどの多数が、「燃え尽き症候群が原因で、ハイパフォーマー(業績の高い人材)が退職する可能性がある」と予想していることだ。そう聞けば、普通の経営者なら、少なくとも2~3時間程度は睡眠不足になるはずだ。売上やイノベーション、生産性をけん引する優秀な社員が続々と辞めていけば、その企業はすぐさま強烈な痛手を被ることになる。
パンデミックのさなかなのだから、燃え尽き症候群には手の打ちようがないと言う人もいるだろう。しかし、衝撃的な事実がある。「燃え尽き症候群を抑制するために、企業内で効果的なトレーニングが行われている」と答えたリーダーはわずか24%にすぎなかったのだ。燃え尽き症候群は、解決不可能な課題に思えるかもしれない。しかし、この危機を乗り越えようとしている企業すら、ほとんど存在しないのが実態なのだ。
実際には、企業がリソースを費やし、従業員に対して、レジリエンスや楽観思考、自己効力感を高め、さらに、考え方を「内的統制」型に変える方法を教えることで、燃え尽き症候群は減少し始めるはずだ。
内的統制/外的統制とは、人生に起こる出来事や結果を、どれだけ自分自身でコントロールできると思えるかの度合いを表す概念だ。「努力すれば成功できる」と心から信じている人は、統制の所在(locus of control)が内部にある。一方、「自分では制御できない外部の状況によって、計画が狂ったり成功が妨げられたりする」と感じるのなら、統制の所在が外部にあるということだ。
重要なのはここからだ。内的統制型の社員は、自分のキャリアに愛着をもっている割合が136%も高いのだ。内的統制/外的統制は生まれつきの特徴だと思うかもしれないが、実際には、適切な介入によって、内的統制を大幅に高められることが研究により明らかになっている。
これは、レジリエンスや楽観思考といった心理的スキルについても当てはまる。楽観的な従業員は、仕事に対して最大限努力する確率が103%高いことがわかっている。また、数十年にわたる心理学研究から、人は楽観性を顕著に高められることもわかっている。