アフガン人のために、官民で働く日本人が今できること

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日本への受け入れを検討すべき3番目のグループが、パキスタンやイランなどの隣国に逃れたアフガニスタン難民の受け入れ、つまり日本への「第三国定住(難民が当初一時滞在した国から別の国へ受け入れられ、定住すること)」である。

日本では2010年から、タイ、マレーシアにいるミャンマー人難民の日本への第三国定住を実施しており、20年からはその対象が「アジア地域に一時滞在する難民」に拡大された。

新型コロナウイルスの影響で実施は実質上延期となっているが、今回のようなアフガニスタン危機に利用することがもっとも妥当な政策ツールである。

UNHCRによると、昨年末の段階で260万人の難民がパキスタンやイラン等にいるとされ、今回新たな難民が隣国に流出することを考えると、それらの国がすでに抱えている膨大な負担を、アジアの先進国である日本が積極的に分担することは極めて妥当である。

ただし、数百万人に及ぶアフガン難民のうち、誰を優先して日本に受け入れるのか。長年待っている難民なのか、あるいは新規難民のうち極めて弱い立場にいる難民なのか、その優先順位付けは難しい。感染症対策も加味すると、UNHCRやIOMなどの国際機関との密接かつ迅速な調整が必要となろう。

ここまで、日本政府ができること・すべきことを3つのグループに分けて見てきたが、実はこれだけでは十分ではない。重要なのは、来日した後の生活をどうするかであり、端的に言えば、生計の確保であり、就職先の提供である。ここに民間企業の協力が不可欠になる。

受け入れるアフガン人は、日本を知る「エリート集団」


先に述べた、アフガニスタンから緊急脱出させ日本に受け入れるべき現地スタッフとその家族が最終的にどのくらいの数に上るのか。

アフガニスタン
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全員が日本への移住を希望するとも限らず、その数は現時点では明らかではない。しかし、一部報道などによる個人的な推計では、心づもりとしては少なくとも100世帯程度の生計の手立てについては準備しておく必要はあるだろう。

筆者個人としては、しばらくの間は生活保護でしのぐこともやむを得ないとも思うが、日本では生活保護受給に対する偏見が強い。また本人にとっても不本意である場合が多い。

「大量の外国人による生活保護の不正受給」が存在するという見方もあるが、厚生労働省も公的に認めている通り、そのような事実は無い。

私自身、以前は国際機関職員として多くの滞日外国人の支援に携わったが、日本で自分のスキルに見合った職を得て、自分の収入で家族を養い、子どもを学校に通わせる、という「ごく普通の生活がしたい」人々が圧倒的大多数だ。

そもそも、今回日本への受け入れを検討しているアフガニスタン人は、日本の官民団体で働いていた人たちであり、現地語だけでなく日本語や英語も話せるトライリンガルである可能性もある。

日本の勤務文化や種々の不文律ルールにも既に精通しているいわば「エリート集団」と言える。そのような人々を生活保護に陥らせるのは、日本社会にとって彼らにとっても無駄でしかない。同様のことは、現在日本にいるアフガン人留学生や難民申請中の人々についても言える。

政府が受け入れを決めること自体は「政治的な意思」があればできることである。しかし、その決定を促し、実行に移すには、来日後の生活の様相がある程度見える必要がある。

ここで不可欠なのが、民間企業による就職先の提供。もちろんコロナの影響で失職した日本人も多数いる中で、「外国人を優先させること」の是非もあるだろう。また突然、終身雇用のような形で就職させるのが困難なのも分からないではない。

しかし、今回日本への受け入れが喫緊で必要とされるのは、日本に貢献してくれたアフガニスタン人とその家族であり、またすでに日本にいるアフガニスタン人である。この記事を最後まで読んでくれた日本の企業人たちの心意気に期待したい。

文=橋本直子 編集=露原直人

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