アフガン人のために、官民で働く日本人が今できること

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連日のアフガニスタン情勢の報道を受けて、心を痛める人、無力感や敗北感に苛まれる人も多いことだろう。遠く日本にいる自分にも何かできないか思いめぐらせ、パッと頭に浮かぶのは募金や物資の寄付かもしれない。

しかし、ここはぜひ「アフガニスタン人の日本社会への受け入れ」を積極的に考えてみてほしい。そのために、今すぐ日本政府と民間企業がすべきこと、できることについて、官と民に分けて提案したい。

まず日本への受け入れで考えられるアフガニスタン人は、以下3つのグループに大別できる。

全てを「外国勢力」として扱う過激派


まず、現地で日本政府や民間団体のために働いてくれたスタッフとその家族。彼らの緊急脱出と日本への受け入れは必須だろう。特にイラクやアフガニスタンでは以前から、例えば英米軍に雇われた通訳等が、「外国勢力に協力した裏切者」として過激派から狙われ、実際に殺害されるケースが多数報告されている。

現地スタッフと家族の脱出、そして受け入れについては、軍を派遣していた欧米諸国では当たり前の「後始末の一部」として長年行われてきた。私が知る限りでは、日本政府も初めて彼らの受け入れを決めたとされ、大いに歓迎したい。

本稿執筆時点(8月23日朝)では、アフガニスタンに自衛隊機を派遣して、在留邦人と共に、日本大使館とJICAの現地スタッフ、そして家族を、一旦周辺国まで脱出させることは決まったという。

ぜひこのリストに、日本のNGOや報道機関、ジャーナリストに協力した人たちや家族も追加して欲しい。例を挙げると、日本のNGO「ペシャワール会」の代表、中村哲医師が過激派によって殺害された非常に痛ましい事件は我々の記憶に新しい。その際、現地の運転手と警備員も5名殺害されている。

過激派は、日本の大使館もJICAもNGOも報道機関も全て「外国勢力」として一緒くたに扱い、現地で働く人たちは皆同じ危険にさらされている。

彼らを見殺しにしないことは人道主義に基づく日本の「道義的な責任」であるだけではない。危険にさらされた際の受け入れ体制があるとなれば、日本のNGOや報道機関が海外で活動する際に優秀なスタッフを雇えることに繋がり、中長期的に日本の国益にも叶う。

次に挙げられるのは、すでに日本にいるアフガニスタン出身者だ。政府統計によると昨年12月の段階で約3,500人いるとされ、中には留学生や難民申請中の人もいる。在留資格が切れそうな人については、延長または他の資格に変更することが妥当で、難民申請中の人で難民認定が未決の人については、ひとまず人道配慮として在留特別許可を付与することが適切であろう。

前者については、古く「天安門事件」の際に中国人留学生の滞在資格を延長あるいは変更したという先例があり、後者については、つい数カ月前に、在日ミャンマー難民申請者の滞在資格を特例的に認めるという決定がなされている。それらの先例を在日アフガニスタン人にも適用するのは、十分可能なはずだ。
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文=橋本直子 編集=露原直人

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