新型コロナウイルス感染症のパンデミックのさなかに、マイクロソフト、グーグル、アマゾン、アップル、フェイスブック、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、JPモルガンといった大企業は、ほぼ全従業員が在宅勤務になっても、並外れてうまくやってきた。その事実にもかかわらず、従業員をオフィスに戻したいという底流は依然として存在していた。
在宅勤務で賃金カットに
今後もリモートワークを続けたいと考えるグーグルの従業員は、居住地によっては賃下げになる可能性があるという。同社は、さまざまな勤務地について、そこで働く従業員がどれくらいの賃金を得られるかを計算する、新たな賃金計算ツールの運用を開始した。
大都市から郊外へ引っ越す従業員が、賃下げの対象になるということだ。たとえば、ニューヨーク市に居住し、リモートで働くグーグル従業員は、賃金をカットされることはない。だが、ロイターの報道によれば、ニューヨーク市内への通勤者が多く暮らすコネチカット州スタンフォードに住む従業員は、在宅勤務をする場合、賃金が15%少なくなる。
オフィスから遠い地域への転居を決めたグーグル従業員は、大幅な賃金カットに直面する可能性がある。サンフランシスコを離れて、カリフォルニア州の高級リゾート地であるレイクタホに引っ越した従業員は、25%という大幅な賃下げの対象になるとロイターは指摘している。
生活費の高い都市から郊外へ
2020年5月を振り返ってみると、ツイッターのジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)は当時、在宅勤務の継続を「恒久的に」認めると公言していた。ドーシーは次のように述べていた。「それぞれの従業員が、自分がもっともクリエイティブで生産的になれると感じる場所で勤務できるようにしたい」
フェイスブックの創業者でCEOのマーク・ザッカーバーグは、リモートワークについて次のように話している。「この規模の企業としては、リモートワークにもっとも積極的な会社になりたいと考えている」。この発言は寛大で素晴らしいものに聞こえるかもしれないが、その根底には労働者にとっての脅威も潜んでいた(これについては後述する)。
フェイスブックの本社(Getty Images)
リモートワークの機会を与えられたフェイスブック、ツイッター、スクエアなどの従業員は、一見したところでは、通勤や厄介な同僚とのつきあい、果てしない対面ミーティング、自分をにらみつける上司から解放されることを喜んでいた。
サンフランシスコやシリコンバレーのような、家賃や住宅費に一財産を費やさなければならない都市に住む価値はないと言う者もいる。税金と生活費も異常に高い。そうした大都市を離れ、もっと手ごろで質の高い家と高水準の暮らしが手に入る場所へ引っ越す人は多いだろう。
こうしたトレンドは、多くの郊外や、陽光あふれる温暖で税金の低い州にとっては恵みとなる一方で、大勢の人が脱出した都市には損害をもたらす可能性がある。