人口減少が進むなか、地域の街をどう活性化させていくかは日本の大きな課題だ。そこで、今回は東京都豊島区の大塚に注目したい。大塚といえば、山手線のなかでも「素通り駅」といわれるほど長い間注目されていなかった街ではなかろうか。しかし近年、その様相が大きく変わっている。
大塚駅北口周辺を中心に、新たな都市型ホテルや飲み屋横丁がオープン。駅前には大型な電光モニュメントも設置されて、以前と比べて明らかに活気づいている。最近では、オンライン上に駅前をフルコピーしたバーチャル空間も誕生した。
しかも、これらはすべて大手デベロッパーによる総合開発のたまものではない。この勢いがどのようにつくられていったのかをひもといていくと、ほかの地域でも参考になるヒントが見えてきた。
実は、大塚の大きなうねりの中心には、ひとりの人物がいる。それが、山口不動産という地元企業の代表を務める武藤浩司氏だ。大手監査法人で経験を積んだ後に家業の山口不動産に入り、2018年に代表に就任。すごい勢いで変革を起こしているやり手だ。
何が「やり手」なのかを端的にいえば、それはいろんな人たちに街づくりに参加してもらう巻き込み力だろう。大塚の街の再開発のきっかけは、18年に星野リゾートの都市型ホテル「OMO」を誘致する際に、武藤氏が自社の不動産を提供したことだった。ホテルのオープンと同時に「東京大塚のれん街」という飲み屋横丁が立ち上がったが、そこでは、恵比寿横丁をヒットさせたスパイスワークスと連携。
さらに山口不動産は、面白法人カヤックと提携して、20年には民間企業では初となる地域通貨「むすび」を導入し、地域の飲食店などで利用が進んでいる。また、オンライン上の大塚駅前のバーチャル空間は、テレビ東京の協力を得て実装したもの。コロナ禍で人々のリアルな接触が減っていることを考慮して、オンライン上で地域を盛り上げるコミュニティとしてつくりだした。