多様性と調和。五輪開会式の「プラカードベアラー」がつなぐ想い


仲間と過ごした、夢のような一日もあと少し。帰路についた私たちは、無観客ながらも開催された安堵感、選手をフィールドへ案内できた高揚感など様々な気持ちがあったが、プラカードベアラーに参加した全員が無事に当日を迎えられた達成感と充実感が一番大きい。

帰るころにはプラカードベアラーもSNSでの発信が可能となったのでチェックすると、みんなの勇姿が伝えられていた。特に某お笑い芸人のツイートには10万以上の反応があり、ホテルへ戻るバスの中でも話題になっていた。

家族や友人からの「見たよ」報告も鳴りやまなかった。この夜は、汗だくで疲れていたはずなのに、返信したり、応募からこの日までの様々な出来事を思い返したりして、眠りについたのは明け方だった。


Photo by Zhizhao Wu/Getty Images

今回のプラカードベアラーの体験を通じて、性別、年齢、国籍等にかかわらずお互いを尊重し、できることに対して力を最大限に発揮する場があることは、個人が楽しく満たされるだけでなく、成果物(ゴール)のパフォーマンスも向上することを身をもって感じた。

このプログラムで時間や想いを共有した私たちは、予定されていたリハーサルだけで運営サイドからお墨付きをもらい、予備日を使うことなく本番を迎えた。本番でのパフォーマンスでも与えられた役割を果たした。開会式に参加した皆さんもきっと同じような状況ではないだろうか。困難の中で無事に終えられた開会式を境に、もちろん賛否両論あるものの、オリンピックに関するポジティブな報道も増えたようにも思える。そして、ベアラーにとって身近な人とその周りの人が「こんなに開会式をじっくり見たのは初めてで、とても楽しかった」と喜んでくれた。

多様性と調和を考え、D&Iにアンテナを張ることから多くのハッピーが生まれる。今後もここで得た確信と貴重な機会への感謝の気持ちを忘れずに、「My Next Action」で掲げた「自分の思いを伝える、相手の声を聞く、発信して誰かの選択肢になる」を実践していく──。

大切な気づきを与えてくれた、東京オリンピック開会式でのプラカードベアラーの体験だった。



松尾桃子◎1976年、東京都生まれ、千葉県育ち。11年の地方公務員を経て、渡英。語学と文化を堪能した後、シンガポール生活をして帰国。帰国後にハマった宝塚歌劇と蜷川実花さんについてつぶやくnoteなどで執筆活動中。現職はスポーツ関連法人でPRとWEBを担当している。

文=松尾桃子 編集=宇藤智子

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