マッピングアプリが可能にすること
GOMiCOと連動してクラウド上で使われるのがMaterial Pool System(以下 MPS)だ。MPSは記録された廃棄物情報を集約したプラットフォームで、GOMiCOに入力されたゴミの種類、量、発生時間などの情報を集約し、地図上にマッピングした形で表示される。
Material Pool System
「本当の意味で廃棄物を削減するためには、効率よく生産するだけでなく、不要になったゴミを見える化し、それを資源として再利用する必要があります。廃棄物の発生量や場所がデータ化されることによって回収のタイミングを効率よく計画することができ、廃棄されるはずのゴミを再利用する機会が生まれます。この循環が廃棄物問題解決の鍵となります」
種類別に廃棄物の量が分かると過剰生産分が可視化され、必要な時に必要な量だけ生産し、過不足なくモノを供給することができる。過剰供給を減らすことにより無駄な廃棄物が生み出されることも避けられるので廃棄物削減にも貢献できる。このように、GOMiCOを利用することで、廃棄物が資源として循環し、サーキュラーエコノミーを実現することが可能になるのだ。
プラスチックは悪者か?
近年、過剰生産、過剰利用が問題視されている製品が多数ある。プラスチックもその一つだ。環境に悪いのであれば、その素材の使用を廃止すればいいという極論になりがちだが、いまやプラスチックは生活に欠かせない役割を担っている。荒井さんは、廃棄することも見据えた上で、製品の回収や処理方法も同時に考えることが重要だと話す。
「プラスチックにも優れた機能があり、単純に使うのをやめればいいというのも難しいのです。例えば、プラスチックは他の素材で製造された容器に比べて軽いため、運搬時の環境負荷が少ない上、優れた食品保管機能もあります。プラスチックではなく紙袋で保存するとなると、食品の腐敗の進行が速まり、フードロスが増えるというトレードオフが発生する可能性もあります。辞めるという判断だけではなく、使用後に適確に処理する方法や、資源として再利用できるような仕組みを作ることも重要であり、私たちはそれを全体最適と呼んでいます」
LCAエキスパート 荒井亮介さん
もちろん、全体最適は簡単に実現できるものではない。世間ではプラスチック袋の廃止も相次いでいるが、荒井さんによれば、普段生ゴミを入れて廃棄するプラスチックのごみ袋も、自治体によっては焼却炉で燃えにくい生ゴミの助燃剤として機能している場合もあるのだという。敵視されがちなプラスチック袋も、焼却するフェーズでは役割が与えられているのだ。
コンポストが窒素の循環を乱す?
また、それでは生ゴミをごみ袋に入れて捨てるのはやめて、生ゴミは全てコンポストすればよいかというと、またそれも本質的な解決にはつながらないと野崎さんは指摘する。
「もし食料や飼料の大部分を海外から輸入している日本が、廃棄予定の食料や有機物全てを焼却せずに日本の土に還したら、肥料から食料に蓄積された大量の窒素が地中に排出されるため、国内の土地は窒素過多になってしまい、逆に環境に悪影響を及ぼすのではないでしょうか。世界の人口を増加させ維持するために作り出されてきた化成肥料の循環ともともとある自然の循環を合わせることはおそらくできません。何らかの技術を利用して全体を俯瞰し全体最適を構築する必要があると思います」