環境に配慮した取り組みとして推奨されることが多い生ごみのコンポストですらも、全体最適の観点から考えると必ずしも常に最適な手段であるとは限らず、そもそもの日本の食料自給の状況から構造的に考える必要がある。このように、廃棄物問題を考えるときは常に全体最適を念頭に置きながらホリスティックなアプローチをとる必要があるのだ。
廃棄物にはジレンマがある。だからこそ。
こうした部分最適によるアプローチの壁を乗り越え、全体最適を実現するための可視化ツールがGOMiCOなのだが、野崎さんによると、GOMiCOを普及させていく上では、利用者がGOMiCOに廃棄物を登録する経済的メリットがないことが課題と話す。
「志高い企業は理念に賛同し、協力をしてくれますが、そのような企業は多くありません。いまはリサイクルするほどコストがかかる状況で、根本から変えようと思ってくれる人は少ないのです。ただ、多くの方が利用し、多くの蓄積データが集まってくれば、必ずコストメリットが生まれると確信しています」
野崎さんは、将来的には資源の出所をすべて見える化し、データを使って物流を最適化し、リサイクルを含めたコストが削減できる世界を構築していきたいと語る。一社だけではメリットが生まれないかもしれないが、全員が参画すれば、全員でメリットを享受できる。それがGOMiCOの本質であり、そこから価値を生み出せるかどうかは、どれだけ全員が同じビジョンを共有できるかにかかっている。
結局、見えないところでしっかりやる企業が生き残る
現状、適正に廃棄物を処理することの重要性を感じている企業や団体は決して多くはない。しかし、長年にわたり廃棄物処理の業界で多くの企業と仕事をしてきた野崎さんは、いまでも生き残っている企業は、共通して昔からコストをかけて廃棄物をしっかりと処理している企業だと語る。
「廃棄物は、消費者からは見えないところですし、コストもかかってしまうので、しっかりと処理をしても得があるようには感じられません。ただ、消費者や社会からは見えないところでも、やるべきことをやってきた企業は、継続して業績を伸ばしていますし、そうではなく適当にやってきた企業はやはりうまくいかなくなっています」
野崎さんによると、中国がプラスチックごみの輸入を禁止する以前から、中国の環境問題やプラスチック処理施設の現状を憂慮し、高い買取価格に惑わされることなく国内でしっかりと処理できる体制を整えてきた企業は、中国による輸入禁止後も慌てることなく安定して事業を継続できているそうだ。
外部性を考慮することなく、自社や自国のことだけを考えていると、いずれそのつけは回ってくる。長年廃棄物の業界で働いてきた野崎さんからの指摘には、非常に説得力がある。
野崎さんは、廃棄物問題には答えがなくジレンマを抱えている状況だからこそ、みんなで協力していく姿勢が大切なのだと主張する。
「まずは全体最適を意識し、人類が歩んできた歴史を理解して、協調しながら進めていくしかないですね。誰かを悪者にしては解決しないので、協調しながら良い方向に持っていきたいと考えています」
この記事は、2020年3月にリリースされたCircular Economy Hubからの転載です。
(上記の記事はハーチの「IDEAS FOR GOOD」に掲載された記事を転載したものです)
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