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2021.08.06 08:30

子どもが学び発信する場を 15歳起業家に宿る「当事者意識」の源

撮影=伊藤圭

撮影=伊藤圭

小学生や中学生という年代から、起業や高度な研究にチャレンジする子どもたちがいる。彼らはどのように才能を開花させてきたのか。そのストーリーに迫る連載「U15 才能開花の原点」。

第1回は、現在中学3年生で15歳の佐藤夢奏(さとうゆめか)。小学6年生で「まなそびてらこ」を立ち上げた起業家だ。「まなそびてらこ」には、学びの中に遊びを見出し、遊びながらも学ぶ、それを体現する寺子屋にしたいという意味が込められている。

彼女が持つ、学ぶことへの貪欲さ。その原動力はどこにあるのか──。


佐藤が現在メインで手掛けるのは「子ども記者クラブ」という事業で、小学生や中学生が大人に会いに行き、取材を通して生き方や価値観を学ぶイベントを開催している。

受験に向けて志望校を取材したり、起業家や活動家を訪ねて話を聞くなど個人でも参加できるほか、まなそびてらこでは夏休みの自由研究課題に活用してもらえるよう、取材、執筆、記事の提出までを一つのプログラムとして学校へ提供もしている。

小2から国会中継 両親と意見を交わす


当時12歳の彼女が起業をしたのは、中学受験情報を扱う雑誌の副編集長として働いていた母がきっかけだった。9歳のある日、佐藤はこんな疑問を投げかけた。

「実際に学校に通うのは子どもなのに、なぜ私たちは大人が取材した話しか読むことができないのか」

母を説得し、取材現場に同行するようになると「いち読者として見ていたものとは違う景色が見られる。楽しくて、その感覚にはまってしまった」という。

その後、自らが新しい知識を得ることだけではなく、大人から教わるだけではない、学生主体の学びの場を作り、そこで得られた体験や感覚を子ども目線で発信できる機会を作りたいという思いを抱くようになった。

しかし「学生でボランティアをしながら、プライベートのお金を回すのでは、質を高めていくことができない」。そう考えて母に交渉し、共同で起業した。

ものごとを自分事化し、事業にまで発展させる、その当事者意識の原点は親の姿にある。

「小さい頃から、母と父が仕事の話やニュースから得た考え方を、食卓でもテレビを見てる時でも話していた」。

いずれ佐藤自身もニュース番組を見るようになると、抱いた疑問を仕事から帰ってきた両親に話し、意見を交わし合った。

さらに、小学生2年生の頃からは、授業が終わって家に帰ると国会中継を見るようになった。

「国会では言い合いになることが多い。なぜこの場で喧嘩してるの?なぜこの問題は国のトップで争うの?学校では全員が投票して決める権利があるが、国だと違う決め方になるのか」など、まだ社会のルールを知らなかったからこそ、次々と疑問が湧いてきた。

佐藤夢奏
撮影=伊藤圭

ニュースでは、政治家や芸能人の発言が切り取られる。だが前後の言葉を聞くと、印象は変わる。報道番組を見てそれを実感し、一部始終を見れば発言の内容がより理解できるのではと、国会中継を見始めたという。

「なんで?」という面倒くさい子


しかし、小学生で起業という道を選んだことは、少なからず同世代との壁になっている。特に彼女の原動力にもなっている「なぜ?」という強い好奇心は、周りにとって煙たがられてしまうのだという。
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文=露原直人 撮影=伊藤圭

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U15 才能開花の原点

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