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2021.08.06 08:30

子どもが学び発信する場を 15歳起業家に宿る「当事者意識」の源


疑問を共有しようとしても、面倒くさい子と一蹴されてしまったり、「変な考えをしている」と変わった人に見られてしまったり。「起業するような真面目な人はノリが合わない」「流行を追うのが苦手そう」など、同じ感覚を持った人として受け入れられないこともある。

いじめも経験した。こうした周囲とのギャップは今も続いている。

彼女自身は、特別なことをしている意識はないが、距離を縮めようとしても「友達としての壁を立てられやすいので、仲良くなるきっかけが最初からない」と葛藤も語る。

だが、複数の居場所が彼女の救いになった。「色々なところに学びに行き、大人や同世代の子がいる場に参加していた。学校と家しかない中でいじめにあうよりも、負担が少なかった」と振り返る。

こうした苦難に直面しながらも、好奇心のままに活動に邁進し続けられるのは、「強いられない」環境があるからだ。

佐藤が生活してきた地域では、過度に教育熱心な親も多く、親が子の受験や習い事を決める家庭が多いというが、彼女は「親から何かを強いられることは本当に少ない」と話す。

佐藤夢奏
撮影=伊藤圭

「受験期にすごく感じた。みんなは勉強をさせられてるんだと。学ぶ時に『大人にさせられてる感覚』を持つと、それだけで楽しくないものになってしまう。そうなったらイヤだ。私は強制されなかったからこそ、全てに面白みを感じることができた」

母親は「親は、子供が自分の範疇を超えるとコントロールができなくなるから、強いるという方法を使います。でも、私はそれは無駄だと思っています。人は強いられると、それに反発するためにエネルギーを使うことになる。そのエネルギーのベクトルを変えることで、より面白いことを生み出すことへシフトさせたい、これは娘との共通意見でもあります」

ただ、放任主義ではない。

「意見は言いますよ。でもあくまでも私の意見として。それを選択するかは彼女次第です」

学びの居場所を作る


起業をする際には「今、子どもだからこそ価値があるのなら、起業をしても良い」と伝えた。「お金を払えば誰でも会社は作れます。(学生起業家という)肩書きをお金で買う感覚に1度でもなったら、クビにすることは決まっている」と、ビジネスパートナーとして条件を課している。

創業から3年、今、まなそびてらこは、新たなビジネスにも挑戦し始めた。記事を書くというプログラムの提供だけでなく、小中高生ならではの目線や感覚をベースに、チームとしてアイデア生み出し、それを企業の新規事業開発に活かそうとしている。実際に、どのようにコラボレーションできるか、企業と議論が進んでいるという。

佐藤が目指すのは、同世代の仲間と共に、旧態依然な教育概念を変革していくことだ。「EdTech」の第一人者でもあるデジタルハリウッド大学の佐藤昌宏教授や、脳科学者の青砥瑞人氏など、教育に携わる各界の専門家からも意見を取り入れている。ただ過去を否定したり破壊を推奨するだけのイノベーターにならない、ということも彼女の流儀だ。

「まなそびてらこは、全国の子どもが繋がり合うことができる教育プラットフォームを目指す。参加してくれる子どもたちが、未来を創る一員となりたいと思えるような、学びの居場所作りをしたい」

文=露原直人 撮影=伊藤圭

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