スウェーデンの大手フィンテック企業「クラーナ」は2021年6月、後払い決済分野における最大手の地位をほぼ確実にしたと言えるだろう。エクイティファンドから新たに4億5300万ポンド(約700億円)を超える資金を調達したためだ。創業16年目のクラーナはこれにより、評価額が323億3000万ポンド(約5兆円)に達し、欧州で最も評価額が高い非公開フィンテック企業となった。
クラーナのCEO兼共同設立者のセバスチャン・シェミャートコフスキ(右、Getty Images)
世界各地で日常が戻りつつあり、買い物客が実店舗でのショッピングを再開させている。それでも、後払い決済業界を巡るこの熱気は冷めずに維持されるだろうか。
後払い決済は、オンラインショッピング以外にも拡大中
消費者に柔軟性のある決済方法を提供するロンドンのスタートアップ「Zilch」の創業者で最高経営責任者(CEO)のフィリップ・ベラマントは次のように説明する。
「消費者は基本的に、利便性を基準に行動し、最も手軽に買い物をして決済できる方法を選ぶだろう。特にZ世代とミレニアル世代の消費者は、パンデミック前からオンラインで買い物をしていたが、eコマースはいまや世代を超えて消費者の日常生活に溶け込んでいる。こうした消費行動は、実店舗が再開したからといって急に変わるものではない」
後払い決済サービスはeコマースの台頭とともに普及してきたが、今では実店舗での買い物体験の一部にもなりつつあると、ベラマントは指摘する。「実際、ジルチは英国で初めて、タップして分割払いできる『Tap & Pay-over-time』を開始した。この決済方法を使えば、実店舗でタップするだけで瞬時に、その後の6週間にわたって分割払いできる」
クラーナUKトップのアレックス・マーシュは、実店舗とオンラインショップにまたがるこうしたオムニチャネルの流れを目にしてきた。「暮らしが元に戻っても、オンラインとオフラインの両方で日常の買い物をするときに後払い決済サービスを使いたいという強い需要は維持されると見ている。実際、消費者が実店舗に戻りつつあるなかでも、クラーナのシステムを導入する小売店数は増加傾向にある」