世界中からこれほど多くの人を集め、そしてそれぞれの国に帰らせることは、各国に「デルタ株」をはじめとするウイルスの種をまくようなことだといえる。そして、ウイルスは複製を繰り返すたび、元のウイルスとは違うもの、つまり「変異株」を生み出しうる。
それにもかかわらず、IOCは「大会は計画通りに進めるべきだ」と主張してきた。結局のところ、問題はすでに注ぎ込まれた巨額の資金なのだろう。日本政府もまた、国民の大半(およそ8割)が待ったをかけてきたとみられるにもかかわらず、開催に向かって突き進んできた。
確かに、多くの企業がオリンピックに資金を提供し、計画どおりの開催を求めているかもしれない。選手たちの多くは、夢の舞台をさらに先延ばしにして欲しいとは思っていないかもしれない。
だが、感染者の急増を防ごうとしている国にとって、世界中から大勢の人を呼び集めることは、最悪のことの一つだ。同時にそれは、世界にとっても良いことではない。日本で起きるのがどのようなことだろうと、それは日本国内のみにとどまるものではないと考えられるからだ。代表団の全員が、それぞれの母国に帰っていくのだ。
いま世界各国に求められるのは、日本により多くのワクチンを送り、日本に住むより多くの人に、オリンピック開始までに接種を受けてもらうための方法を探し出すことだ。日本に入国する選手と関係者は、出発前にワクチン接種を完了した人とすることも、役に立つだろう。
オリンピックのモットーは、ラテン語で「Citius、Altius、Fortius」。意味は、「より速く、より高く、より強く」だ。これが、新型コロナウイルスの感染状況を表わすものにならないことを願いたい。