ハイヒール着用の義務付けに対しては、性差別的であり、兵士の健康にも悪影響を及ぼすとの批判が噴出。国防省はその後の声明で、着用義務の方針は変えないとした上で、女性兵には「より快適」で、靴ひもで固定するタイプのより安全なヒールを用意すると表明した。
今回起きた論争からは、履き心地が悪い上、時に危険な履物であるヒールが、なぜ今も多くの女性に選ばれているのかという疑問が湧いてくる。
ハイヒールの歴史
ハイヒールが初めて登場したのは、15世紀のイタリア・ベネチアだった。上流階級のシンボルだったという説と、冠水した場所で足を濡(ぬ)らさないようにするため着用されたという説がある。16世紀に入ると、イタリア生まれのカトリーヌ・ド・メディシスが1533年にフランスのアンリ2世との結婚式で履いたのをきっかけに、同国で流行した。
履いたのは女性だけではなかった。ルイ14世は、低い身長を補うためにヒールを履いた。着用者は当初、上流階級のみだったが、ビクトリア朝時代までにはあらゆる階級の女性が、ドレスの裾が地面につかないようにするためにハイヒールを履くようになった。
一方、現在ハイヒールを履く女性の大半は、裾の長いドレスを着てはいない。さらに医学界では、ハイヒールの着用が健康リスクを増大させることが広く認知されており、体に生じる影響は多くの場合、修復不能だとされる。それでもなお、履きにくく危険性をはらむヒールを履く理由は何だろうか?
ハイヒールを履く女性の方が、男性からも女性からも魅力的と受け止められることは、これまでの研究で繰り返し示されてきた。その理由にはいくつか仮説がある。
ハイヒールを履く女性が魅力的とされる理由
ある研究チームが行った生体力学的分析の結果、ハイヒールを履く女性は、歩き方がより女性的になることが分かっている。ヒールの高い靴を履くと、歩幅が短くなり、ヒップの回転と傾きが増す。こうして女性らしさが強調されることで、男性に対する魅力が増すのかもしれないと、研究チームは指摘した。