筆者の調査では、2021年6月現在、高田馬場の早稲田通り周辺にあるチャイニーズ中華の店は47軒を確認しているが、そのうち2018年以降にオープンした店が30軒もあった。全体の3分の2を占めることから、この3年で店舗数が約3倍増えたことがわかる。
前述のオーナーたちが語るように、高田馬場は中国人留学生の多い早稲田大学に近く、中国人向けの日本語学校や進学塾も多い。日本に留学し、卒業後に都内で働く若い中国系の若い世代が増えたことで、日本人だけを相手にしなくても経営できる環境が生まれたことが急増の背景にはあるのだ。それを当て込んで店を出す留学生出身の経営者も多い。
また客層が若いことから、高田馬場には中国の最新の食のトレンドが真っ先に持ち込まれる。ここ高田馬場からこれまでの中華のイメージを一新するニューウェイブ中華が広がりつつあるのだ。
チャイニーズ中華が集中する5つのエリア
中国語圏の人たちが経営し、調理する料理店である「チャイニーズ中華」を探し、この1年、東京とその近郊を訪ね歩いて気づいたことがある。チャイニーズ中華の出店が集中しているのは、おもに次の5つのエリアであることだ。
まず新宿から新大久保、高田馬場、池袋に至るエリア。池袋から赤羽に至る沿線にも延びているので、埼京線エリアと呼びたい。次に、錦糸町あたりから亀戸、新小岩、小岩に至る総武線沿線の城東エリア。このエリアは江東区や葛飾区、江戸川区、足立区など広く店が点在している。
3つ目が、JR上野駅からJR御徒町駅にかけて。4つ目は、JR京浜東北線の蒲田駅から京急蒲田駅の間。5つ目は、都内からは外れるが、JR京浜東北線に沿った西川口や蕨の駅前もチャイニーズ中華の店が多い。
都内にある5つのチャイニーズ中華の集中出店エリア 「攻略!東京ディープチャイナ~海外旅行に行かなくても食べられる本場の中華全154品」(産学社)6ページより
これらの集中エリアは、それぞれ出店の経緯や店の特徴に、若干の違いがある。エリア別に簡単に解説してみたい。
新宿から新大久保、高田馬場、池袋に至るエリアは、もともと外国人の在住者が多く、一部のエリアでは「多国籍タウン」とも言うべき様相を呈している。
1990年代前半という早い時期からチャイニーズ中華の店が現われたのは新大久保で、1990年代後半からは池袋に出店がシフトした。2000年代前半には西池袋を中心に店は増えたが、一気に池袋に急増したのは2015年頃からだ。2021年6月現在、筆者の調査では、池袋には驚くべきことに100店以上ある。
西池袋は都内最大の集中出店エリア。雑居ビルにさまざまな中華が入店する
現在の新大久保では、中華料理店は必ずしも多数派とはいえないが、JR新大久保駅とJR大久保駅の間に点在している。また韓国やベトナム、タイ、インドやネパール、インドネシアなどのエスニック料理店も増え、多国籍化の度合いは都内随一といえる。