だが、コントロールを外せば、会社がカオスと化すのではないかという懸念がわく。そこで、彼は、ずば抜けた人材のみを業界トップレベルの待遇で雇うことにした。例えば、営業担当者を5人採用するだけのお金があったら、超優秀な2人を5人分の予算で雇う。少数精鋭なら、従業員へのコントロールを大幅に減らせる。これが、「能力密度を高める」という非常に重要なステップだ。
そして、難題は、トップレベルの人材が卓越した結果を出し続けられるかどうかだ。だから、最高の功績をあげられなくなった従業員は退職金を十分に払って解雇する。多くの研究結果が示すように、仕事ぶりは「伝染」するからだ。情熱や活力、高い能力は全体の士気を高める。そのため、ベストプレイヤーのみを残す。
誰を残すか残さないかを判断する際、用いられているのが「キーパー(居残り組)テスト」だ。マネジャーらは、誰かが辞めると言ってきたら、どう感じるかを想像する。その従業員にフィードバックを与えてきたにもかかわらず、退職の申し出にホッとすると思うようなら、その従業員は解雇すべきということだ。
──2つめのステップはどうでしょう?
「率直さを高める」ことだが、これは、忌たんのないフィードバック文化を意味する。従業員は毎日、フィードバックを与え合う。例えば、誰かが飛行機のファーストクラスを利用しようとしたら、「そうしたお金の使い方はよくない」と告げる。従業員同士が責任をもち合うことで、コントロールが不要になる。
率直なフィードバックは敬遠されがちだが、「4A」(4つのA)というガイドラインが決められている。
まず、「Aim to Assist」(その従業員の助けとなるよう心がける)。優越感や怒りから出たフィードバックは禁物だ。次に、「Actionable」(実行できるものであること)。具体的な行動変化を提案する。3つめが、「Appreciate」(感謝する)。受け手には「サンキュー」の一言が必要だ。4つめが「Accept or Discard」(受け入れるか、受け入れないかを決める)。フィードバックに従うかどうかは、その人次第だ。
プロセスは根っこ、木、枝
──次が、「コントロールを減らす」というステップですね。
能力密度と率直さを高める環境が整ったら、急進的なマネジメントの実践に移るときだ。このステップは、3つのカテゴリーから成る。
まず、休暇や出張、支出など、規定を撤廃する「ノーポリシー(社則なし)」だ。休暇日数も宿泊ホテルも、従業員次第だ。これこそ、まさに「自由」の象徴だが、信頼され、大人としての行動を前提にされている分、「責任」が伴う。これが、「自由と責任(F&R)」文化と呼ばれるものだ。
次のカテゴリーが、重要業績評価指標(KPI)など、管理手続きの撤廃だ。大半の米企業は、こうした尺度を基準に功績の査定を行う。だが、最高の従業員の下で能力密度と率直さが高まったら、彼らがやるべきことをやっているか追跡する必要などなくなる。自由にやらせることで、従業員が創造性やイノベーションをはぐくめるような環境をつくっていく。