30U30

2021.07.15 17:00

起業家とミュージシャンに聞く、挫折とセラピーとメンタルヘルス

ミュージシャンのジョー・ジョナス(中央)、ツイッチ共同創業者のジャスティン・カン(右)

ミュージシャンのジョー・ジョナス(中央)、ツイッチ共同創業者のジャスティン・カン(右)

1983年生まれのジャスティン・カンは、2011年にゲームのライブストリーミングサービス「Twitch(ツイッチ)」を共同創業者として立ち上げ、3年後におよそ10億ドルでアマゾンに売却した。まさに、シリコンバレーの成功の典型例だった。

次にカンが始めたベンチャーに、投資家たちは飛びつくように出資した。そのベンチャーも、サブスクリプション形式でスタートアップにサービスを提供する法律会社アトリウム(Atrium)として、いずれ形になるはずだとカンは期待していた。

挫折から立ち直るために


それから3年が経ち、180人を雇用したカンは、アトリウムがうまくいっていないことに気づいた。そして、同社の始末をつけるために、全従業員を解雇するという、きわめて辛い選択をした。

「大きな勝利を収めてから、振り出しに戻って同じことをして、大きな失敗に終わる。辛い経験でした」。2021年のフォーブス「30 UNDER 30サミットキックオフ:創造的破壊の10年(Decade of Disruption)」に登場したカンは、ミュージシャンのジョー・ジョナスと筆者との対話のなかで、そう語った。

「その余波に向きあって、自分を立ち直らせるためには、外の世界で起きていることに対する自分の感情を断ち切って……日々の健康につながり、自分を幸せにしてくれること──感謝とか、瞑想とか、運動といったものにひたすら目を向け、一貫した習慣を築けるようにする必要がありました。それが、私の生活の基盤になっています」


ジャスティン・カン(2019年撮影、Getty Images)

セラピーを受け、瞑想をして、日記をつけ、酒を断ち、運動をする。それによりカンは、挫折から立ち直り、また動き出せるようになった。

カンの禁酒の道のりは、とりわけ重要な意味を持っていた。というのもそれが、日々の習慣の構築を助けるアプリ「Kin(キン)」の立ち上げにつながったからだ。瞑想、日記、散歩、読書といった、長期的な健康のためになる習慣をゲーム化するこのアプリの発想は、禁酒の初期に日数を数えていた自身の体験から生まれた。

セラピーは、人生を変える体験だった


1989年生まれのジョー・ジョナスは、カンのように10億ドル規模の会社を創業したことはないが、兄弟とともに制作した楽曲のストリーミング再生回数は、累計で数十億回にのぼっている。2011年当時のジョナスは、自分が触れればどんなものでもプラチナになると思っていた。


2021 Billboard Music Awardsで演奏するJonas Brothers、左からニック、ケヴィン、ジョナス(Getty Images)

だが、兄弟で制作した、全米レコード協会(RIAA)から認定されたゴールドアルバム1枚とプラチナアルバム2枚に続いて、ファースト・ソロアルバム『ファストライフ(Fastlife)』をリリースしたあと、ジョナスは人生でもっとも暗い悪循環に陥った。『ファストライフ』は大失敗に終わり、4万5000枚しか売れず、RIAA認定は受けられなかった。その直後から、ジョナスは医師の診察室に通いつめるようになり、どこが悪いのかを見つけるために全身の検査を受けた。

「別の医師に3回か4回診てもらったあと、セラピーを受けたらどうかと提案されたんです」とジョナスは話す。「セラピーを試すのは、それが初めてでした。まさに人生を変える体験でした」
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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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