だが、現在の状況から恩恵を受けているのは超リッチな人たちだけではない。世界的に見ると、富の創出はおおむね新型コロナウイルス感染症の影響を受けていないことがわかる。クレディ・スイスが発表した最新の「グローバル・ウェルス・リポート」によれば、パンデミックによる甚大な経済的影響と深刻な失業率上昇にもかかわらず、全世界の家計資産の合計は7.4%増の418兆3000億ドルに達したという。この傾向を考えれば、パンデミックが最富裕層のビリオネアだけでなく、多くのミリオネア(100万ドル以上の資産を持つ人)にとっても好材料であったことが判明したとしても、たいして意外ではないだろう。
2019年から2020年にかけて、500万人を超える人が世界のミリオネアの仲間に加わった。彼らの資産を潤したのは、住宅価格の上昇と株式市場の回復だ。100万ドル以上の資産を持つ人の数は、2019年には全世界で5090万人だったが、2020年末までに5600万人超に増加した。
最も増えたのは米国で、困難な社会状況にもかかわらず、実に173万人がミリオネアに仲間入りした。パンデミック期間中のミリオネア人口の増加幅が2番目に多かった国はドイツで、63万3000人がミリオネアに加わった。3位はオーストラリアで、ミリオネア人口は39万2000人増加した。
興味深いことに、2020年はあらゆる地域のミリオネアにとって好機だったわけではない。一部の国では、おもに通貨下落の結果として、富裕層人口が減少した。ミリオネア人口の減少幅がとくに大きかったのはブラジルとインドで、減少人数はそれぞれ10万8000人と6万6000人だった。
クレディ・スイスによれば、米国における2020年のミリオネア人口の総計は、これまでで世界最高となる2195万人で、2位につけている中国の528万人を大きく引き離している。