ライフスタイル

2021.06.19 12:30

若き帝国ホテル東京料理長が目指す、ラグジュアリーとサステナブルの共存

帝国ホテル第14代東京料理長 杉本 雄


仕入れの面では、契約農家から、規格外の野菜を仕入れる試みを始めている。
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「サイズがちょっと小さい、曲がっているなどの野菜は、ソースなどに使用するにはまったく問題がありません。最初は農家さんも『最高の野菜を納品したい』と、なかなか首を縦にふってくれなかったのですが、こちらの思いを丁寧に説明することで理解してくれました。昨年末に開催した食育をテーマにした親子で参加できるセミナーでは、あえて、そうした規格外の野菜だけを使ってスープを作りました。それをスタンダードメニューに発展させることもぜひやってみたいですね」



魚介類においても同様の考え方ができる。例えば、比較的資源が豊富で環境への影響が少なく、供給が推奨されている品種を「バイキングなどであえて優先的に使うことも不可能ではないかもしれない」と、杉本さんのアイデアは尽きることがない。
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「ただし、大切なのは、それらをどのようにお客様の側に伝えるかです。メニューに記載するにしても、サービススタッフが口頭で説明するにしても、伝わらなければ意味が半減してしまいます。しかし、そこで上手くコミュニケーションがとれれば、お客様の脳裏へ刻まれる。そこまでを“伝える”ことが、我々ホテルの責任なのかもしれません」と言う。

答えは料理の中に


それだけ柔軟な考えを持ち、アイデアに富んだ杉本さんの料理にも非常に興味がわくではないか。

東京料理長の杉本さんのスペシャルコースは、メインダイニング「レ セゾン」の個室プラン「アンティミテ」で食べることができる。料理の中で、環境にやさしいということをどのように表現しているのであろうか。前菜、主菜、デセールと3品を試食したが、まさに、その答えは料理の中にあった。


海老の殻まで余すことなく使った「天使の海老のモダンなサンドイッチ仕立て」

全品を通して、最も表現したいことは、フランス料理の本質がすでにSDGsにあるということだったのだ。魚なら魚からだしをとって、ソースを作る。肉も骨や筋からブイヨンを取り、ワインや野菜などとともに煮つめてソースにしていく。内臓類も、伝統的なフランス料理には欠かせない。つまり、廃棄するところがほとんどないのだ。

そのフランス料理の根本をあくまでも貫いた上に、美味しさや美しさへの新しい表現を加え、独自の世界観を描いている。
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文=小松宏子

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