マネジメントチームが固定化する日本
──会社のステージによって、起業家が意識を変えるべきポイントをお聞かせください。
アーリーステージ、売上10億円、100億円、上場後など、それぞれのステージによってマネジメントチームに求められる素養はまったく変わってきます。マネジメントチームのスケールが会社の規模を決めるので、適宜アップデートしていくことが必要です。
アメリカの場合、ある程度の規模まで会社が成長したら起業家がエバンジェリストのような役割になり、外部からプロ経営者が入ってくることが多い。
海外の起業家が私のところに相談に来ることも多いのですが、彼らは外部マネジメントの導入に熱心だし、フェーズによってマネジメントチームを変えていこうとするハングリー精神が高いです。
比べて、日本のベンチャーはマネジメントチームが固定化しすぎる傾向があります。
自分がゼロから作った会社やチームだから、起業家にとって時には辛い選択もあるでしょう。それでも組織が成長していくためには、チームをアップデートし続けなくてはいけない。なぜならそれが最終的に、会社、そして社会をハッピーにするからです。
マネジメントチームを会社のステージに合わせてアップデートし続ける。日本のベンチャーには特に意識してほしいポイントだと思います。
大ベンチャーを創るために必要な意識
──ある程度新しい事業が育つと、大手などが市場に参入して来るというケースもあります。そういった危機への対処方法についてお教えください。
危機は突然やってきます。
イー・アクセスの時にも孫さんがいきなりADSL市場に参入してきて、我々の原価くらいの価格で売り始めた。そのニュースを見たときは社員全員が真っ青になっていたと思います。
しかし、私がそのニュースを見て思ったのは、「明日、絶対にニコニコして会社にいこう」ということ。
そして次の日、社員に向けてこんなことを言いました。
「これはマーケットが巨大に拡大する素晴らしいチャンスだ。だからこそ、我々が作ってきたビジネスプランをもう一度、根本的に見直そう。そしてこの機会で私たちが変革し、大飛躍しよう。」と。
その後、トップマネジメント全員が徹夜しながら、事業の隅々にいたるまでコストカットや売上アップ施策について1点1点見直しをかけていきました。すると、孫さんの会社よりも安いコストでできる道筋が見えたのです。
あの危機がなかったら、イー・アクセスは無駄の多い事業体のままで、たいした会社になってなかったかもしれません。危機が組織を筋肉質にし、健全化させたのです。
このように、外的危機というものを、さらに高付加価値企業に進化するチャンスだと捉える。そして、トップが全精力をかけて会社を変えることにとことんコミットし続ける。この意識が、何千億円規模のベンチャーを創る上では大切です。